第13話 ページ13
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「――――仕事なんてないんでしょ」
「……んふ、せーかい、」
乗りなれたミニバン。
ハンドルをきる彼女は間違いなく今まで出会った中で一番腕がいいマネージャー。そしてドライバー。
会うまで気が付かなかった。
…見てしまうまで、考えもしなかった。
何故私達だけが知らなかったのか。
今になって、何故再び会うことになるのか。
「ちょーーーっと興味出ただけじゃん……てか連れてきたのあのワンレンだし…私悪くなくね…?」
「めっちゃ焦ったからね?監督から顔合わせまでの接触止められてたのに気が付いたら皇天馬のとこにいるんだもん。GPSって有能なんね」
「……GPS?」
「あっ、やべっ」
「おい待てコラとんでもない単語出てきたけどぉ!?」
いつの間にそんなもんつけてんの?
マネージャー以前に人としてそれはセーフな行為なの??
スマホに位置情報飛ばせるとか凄くね?凄いけど絶対そのスマホ落とさないでね?私のプライバシー筒抜けだから!!
……と、まぁ、そんなことは置いといて。
話を戻そう。
つまりは、だ。
このドラマ企画そのものに何かしらの意図があるのが見え見えということで。
なんで、ヒロインなんだ。
なんで、恋愛路線に変更なんだ。
あの頃と同じでいいのに。
私達は…変わってないんだから。
「ほら、あの監督気まぐれじゃない?あれでしょ、10年ぶりに会った2人のぎこちなさ?っていうの?そういうの見たいんだって」
「…話しそらされた気がするけどそれには納得かも」
「実際私はすごく楽しみだったんだけど!」
「え、なんでキレ気味?」
「だって会っちゃったんでしょ?!私のいない所で!!」
「……ううん」
会ってなんかない。
閉まりかけたドアの隙間から見えただけだ。
随分としっかりした背格好と変わらない紫の目が。
言葉を交わすのもままならなかった。
でもそれで良かったんだと思う。
「会っては無いんだよね。誰かさんが急かすから」
話す言葉なんて見つからなかった。
今も探してる。
5日後、どんな顔でどんな風に話せばいいのか。
――――急に遠くなった。
私の知らない時間を過ごした彼は、あの頃の彼と同じようで違うかもしれない。
それを実感してしまったんだ。
…目を逸らしていたのに。
「……男の人、なんだな……天馬も」
役じゃなくて、
本当の、男の人。
「参考程度に見てたけど……やっぱり全然違うわ」
私にはなれない者。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時