交渉 ページ3
◇
第一話 神は死んだ
「突然飛び入り入学…なんて言われてもねえ」
とある一室で男が資料と目の前の少女を交互に見ながらため息混じりにそう言った。
『Nina=eternal』
あまりにも情報が少なすぎる資料を面倒そうな顔で一瞥しては、少女の顔をみてだらしなく頬を緩めていた。
「父がどうしてもこの学園が良い、というもので」
「それにしてもだよ…もう受験は終わってしまってるし」
「無理なのは重々承知しています。せめて、試験を受けさせていただけませんか」
「うーん……」
男は唸りながら少女を見つめている。
苦そうな顔をして、芋虫を踏み潰したような顔をした。
その後、男はハッとした顔をし、何処からかタロットカードを取りだした。
「そうだ、これで決めよう。これは魔法の込められたカードでね、もし天使が出てきたら考えてもいいよ。神様の目がついてるって言われてるんだ」
「へぇ。もし天使が出なければ？」
神、と聞いた少女の目は一瞬ぴくりと痙攣した。
しかし男はそれに気づかず、にこりと笑い言った。
「もちろん帰ってもらうよ」
「……やりましょう」
少女は心底めんどくさい、と思った。天使は出るはずがないと分かっていたからだ。男は魔法が込められている、と言っていたため、目を凝らしてカードを見てみると、天使のカードに人避けの魔法がかけられているのに気がついたのだ。人避けの魔法がかけられているのだから、そんなものこちらに回ってくるはずがない。
ただの負け戦だ。やる意味は無い。しかし依然と、負ける気はしなかった。
「はい、好きなものを選んでね」
男がカードを差し出した途端、魔法は見えなくなった。やはり、目印をつけられないような、そういう対策はしてるみたいだ。
男はほくそ笑みながら、少女にカードを差し出した。
少女も負けじと優雅な笑みを浮かべながらカードを一枚、迷いなく引いた。
「……………は」
声を発したのは男だった。
「わ、やったあ！これで試験、受けさせて貰えますね」
少女はくすくすと笑い、嬉しそうに顔を綻ばせながらカードを手で弄んでいた。
「そんなはず…あるわけ」
「神の目がついているんでしょう？」
「っ…」
男は有り得ない、と声を荒らげる。しかし、理由を言ってしまえば不正をしているとバレてしまうため、ただ唇を噛み締めるしか無かった。
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作者名：泥団子 | 作成日時：2023年10月3日 19時
