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モノクル越しに覗く身体は、もう隠す傷もない。
呪いで自傷していた補助監督はもういない。
そこには吹っ切れた笑みを浮かべた一人の人間が、客人用の駄菓子を堂々と摘んでいる。
「……ありがとうございました。天使ヶ原晴厶先生」
「どういたしまして、次に悩んだらマトモな医者行けよ」
目敏く高い駄菓子を食べ終えると、さっさと足取り軽く去っていく。
あれが呪術界というブラック企業から解放された奴かー……晴れやかだなー……とかなんとか思いながら、俺は3ヶ月前を思い出した。
「──生きていていい、と言われた事が無いんです。もしかしたら、言われるまでもない事なのかもしれませんが」
切れて血が滲んだ青白い唇で、ペンキを塗りたくったような淀んだ隈で、足元しか見ないような自己否定の塊で、
そこから溢れた言葉を拾った俺は、さらっと無責任に。かつ、自由に発言した。
「だから生きる理由がないって？ それ、別に死ぬ理由でもねーじゃん。ちゃんと考えて発言しろよばーか」
あの時の予想もしなかったモノを見る、見開いた目は中々に笑える。
さて、これからのアイツは、何を探すのだろうか。
生きていいと言ってもらえる人か、生きる理由か、死ぬ理由か、まぁ確実に探しているのは仕事だろうが。
あの元補助監督の俺ができる理解は終えただろう。なら、別にこれ以上はいいか。
──と、独りきりの保健室にノックが響く。
「んー、はいはーい、はいってまーす。怪我人かですかー、心の怪我人ですかー、それともサボりー？」
まだ理解しきれていない人だといいなと、俺は扉を開けた。
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作者名：シロツメココロ | 作成日時：2024年3月19日 14時
