もう一つの夢物語【wr*wr*d!】 (ページ6)

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発砲と苦痛。ページ6

私は咄嗟に左に走った。最も、音を聞いた時点で逃げても恐らく間に合わないのだろうが。
その軽快な音と共に私の重心が大きく崩れる。そのまま鈍い音を立てて転がった。体の節々が遅れてずきずきと傷んでくる。じわり、と右肩から嫌な感覚がした。見なくても知っている、この感覚は。
ローブ越しに赤く染まる右肩が激痛を訴えて、思わず右手のナイフを手放した。まずい、早く退散しないと。姿が見えない第三者の襲撃は目の前の奴よりも危ない。右肩を抑えて壁に寄り掛かり立ち上がる私を見て、彼はふっと鼻で笑う。
可笑しい。これはおかしい。普通ならこの状況を好奇ととって私を殺すか、第三者を恐れて逃げるかの二択だ。だからこいつがこの場で何もせず立ち止まる選択肢の意味、それは。
階段をゆっくりと上がるその音のせいで、嫌でも分かってしまう。
ゆっくりと姿を表した彼は、何処かで見た様な気がした。

「…何が目的だ？金か、食糧か体か…命か。」

「そんな物は必要無い。必要なのはここの情報とこの国の情報、それだけだ。」

「…は、あ？まさか裏路地出身じゃないのか… まあいい、それで命を見逃すか、それとも始末するかどちらだ？」

「その質問は意味を成さない。見逃すと言ってもそれが嘘ならお前は死ぬ、むしろ死ぬ確率の高いこの場では愚問だ。」

「… ここは裏路地、つまり掃き溜めだ。表向きを平和国家とするため、社会不適合者その他を収容しておく場所。定期的に死刑囚が餌として放り投げられるある意味の死刑執行場だ。
国、か。国王は甘い、位か。生憎とここで生きていると世界情勢も何も知らない。さあ、この位だ。とっとと殺すか逃げるかしないと時期に別の奴が来るぞ。」

「ふむ、素直なのは大変結構。ご忠告まで感謝する、それでは退散するとしよう。精々その怪我で生き延びることだな、ナイフ遣い。」

彼、もとい彼等はそのまま窓から飛び降りて姿を消す。一体何がしたかったのだ、本当に。情報が欲しいならこんな所じゃなくても手に入る筈なのに、わざわざ商売道具…生き残るための右肩を潰してくれやがって、と悪態をつく。
しかしこの状況は八方塞がり、出血を止めてしまわないと命に関わる。
とりあえず場所を移そうと膝をつくと、階段を誰かが登ってくる音がした。

そっと拳銃を左手で構えて、その音が近くなった瞬間に撃つ。

しかしその場に現れた人間は傷一つ無く、私の前に堂々と立つ。

絶体絶命、冷たい汗が流れた。