もう一つの夢物語【wr*wr*d!】 (ページ34)

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轟音鳴響く。ページ34

天井からぱらぱらと砂が舞う。同時に重い天井の一分が風をきって落ちてくる。煙と砂埃で前が、味方が見えない。何処にいるんだろうか。きっと無事だろうけれど、なんて強引な。
慎重に慎重に歩みを進める。王が座っていた位置まで、目測で静かに静かに音を立てずに歩み寄る。
砂埃の中で一発の銃声が鳴る。私の手の拳銃が、彼の居た位置を正確に射抜いた。
そう、居た位置を。
既にかの王は、その椅子から転がり落ちていた。銀色の剣を胸に、ただ呆気なく。

銀の剣なんて二人とも持っていない。じゃあ一体誰だ、と私が結論を出す前に爆風と共に砂が飛んでいく。視界が晴れて、漸く目に付くものはいつかに見た水色。
あの時神と名乗った彼。私の右腕を治した人物。
彼が笑顔で立っていた。

慌てて左右を見渡す。何処にも彼らの影がない。まさか瓦礫の下敷きになった？そんな訳ないだろう、彼らの瞬発力は素晴らしいものだ。私ですらかわせたその瓦礫を彼らがかわせないわけがない。
余り周りを見すぎていると、目の前の人物を見失う。彼らを信じて、私は拳銃を構え直して彼を見据える。

「名前、名乗ったっけ？俺、しんぺい神。神様だよ。覚えてる？」

「覚えてる。昔私の右腕を治療していった人物。」

「何だ、覚えてるんだ。君を生かしておくと面白そうって言ったの、なら覚えてるよね？面白いのは今だよ。」

「…ただの戦争だ、面白さも何も無いだろう？」

「ふぅん。なら… ほら、カノン。早くおいでよ、君の友達が居るよ？」

カノン。嫌な予感がした。その名前は、確か私と一緒に国を逃げ出した… カノン・シルヴァーナ。と、記載されている人物の名前。
彼の側から出てきた彼女は、茶色の髪に翡翠の目の彼女は私を見るなり笑顔を浮かべる。

「わあ、生きてたんだ！よかった、心配したんだよ。」

一歩、私に近づく。誰か思い出せない。見たことはある筈なのに、この子がどんな人物だか分からない。

「ああ、本当に記憶が無いんだ。」

一歩。その翡翠の目も見慣れたはずなのに、何故かその奥に黒さが見える様で堪らなく怖くなる。

「可愛そうな＿＿＿ちゃん。でも。」

歩みを止める。私は空いた手で剣を抜いた、その刹那。

「叛逆者は生かしておけないよ！」

彼女が抜いたレイピアが私の剣に弾かれて右肩を掠める。叛逆者？どういう事だろう、分からない、分からない。私は私になる前に何か酷いことをしたのだろうか。怖い。彼らが傍に居ない、たった独りだ。