もう一つの夢物語【wr*wr*d!】 (ページ20)

今日:17 hit、昨日:0 hit、合計:10,131 hit

敵視と奇々。ページ20

ちらりと扉の隙間から多人数の体が見える。ああ、もしかしてこれは。
“自己紹介”という奴だろうか。紹介するものもないのになんて事を。笑顔を崩さない金髪が少し憎くなって、しかし私はどうもできない。そのまま彼の部屋へと運ばれると、恐らく幹部レベルの仲間であろう人間が和気藹々と話をしている。この人たちは戦争しているというのに何故こんなにも呑気なんだろう。いくら今が停戦、戦勝国状態だとはいえ…

「諸君らに紹介しよう、彼女が我々の仲間に加わった…あー、なんだっけ？A？そう、Aだ！」

あやふやな自己紹介、いや他者紹介。もっとも今さっき名前を付けられたのだから、仕方ないのだろうけれど。

「グルちゃん！どこで女の子なんか拾ってきたん？なに、まさかそういう？どれー的な？」

「違う。敗戦国から巻き上げた戦利品だ。まあつまり戦闘要員だ。ゾム、お前の部下と言ってもいいかもしれん。」

「俺？俺そういうの教えるとか苦手だけど。」

「構わん、こいつはそもそも戦闘能力を有している。」

「グルさん、何でその子椅子から動かないの？というか、敗戦国の子なら叛逆とか大丈夫？」

色んな人が口々に喋るものだから私の脳内が混乱する。青髪と金髪と茶髪は目を輝かせてるし、あれ？金髪の人間は二人いるのか。赤い目のやつと茶色の目のやつ。前者は総統…グルッペンだけど。

「一旦質問終了、まずは自己紹介からだ。ほら、A。あくしろ。」

「… はぁ。どうも敗戦国の現王様な感じらしいAです。誰かに足をぶった斬られたせいで動けません。よろしくお願いするつもりはそんなに無いです。」

「という訳で従順な敗戦国の王様だ。ちなみにこいつは自分の国の王様…元王様を殺してるから我々と同じようなものだ、心配するな。」

いったいどこからそんな嘘を吐けるのだろう、と。しかし今我々と同じ、と言った。つまりこいつらは…先代の王様を殺して総統という位置に立っているのか？酷い話だ、と王様殺しの私は溜息をつく。

「俺！俺コネシマ！えーと、戦闘兼門番係みたいな感じ！よろしく！」

「俺は…鬱。ここの政治的サポートをする為の」
「この人は鬱先生、そんで俺らと同じ門番兼戦闘係な！俺はシャオロン、さっき言ったとおり門番戦闘！」
「ちょ、シャオチャン…」

「ひとらんらん、だ。戦闘。最前線で戦うお前と同じ係。」

「ゾム。同じく戦闘、とりあえず同じチームだから覚悟しときや。」

なんだこの人達。物騒すぎる。