もう一つの夢物語【wr*wr*d!】 (ページ11)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:10,127 hit

刹那と再戦。ページ11

彼は数秒考えてその顔に笑みを浮かべる。

「ああ、情報収集の為に罠に掛けた奴か。思い出したよ。」

一々一言余計だ、と憤りたくなる気持ちを抑えて、表情を変えずに私は言う。

「そう、前君達に負けたナイフ遣い。そして、今は現国王。つまりはお前等の敵、その長だ。」

自分でも声のトーンが落ちたことは分かった。彼はその笑顔を崩さない。

「そうか。なら貴様に問おう。和平条約を結ぶ気は？」

今更こいつは何を言っているのだろう。和平条約を結んで守るものなど、もう一つもここに有りはしないじゃないか。そんな見え透いた罠にはもう引っかからない。

「そんな物に興味は無いよ。お前も私の国も焼け野原で、もう守る物なんて一つも有りはしないじゃないか！それに二対一なんだから最悪数の暴力で押し切られるだろう？」

「…十対一だが。まあいい、それならここで死んでもらうまでだ。」

「そんなのもっとお断りだ、じゃないとあんな所で生きた意味も無くなるじゃないか。世界をまるごとひっくり返す位にならないと釣り合いが合わないよ。あ、そうだ。この玉座の裏、監獄に繋がってるみたいなんだよね。地下って攻撃を凌げるんでしょ？ならさ、もしかしたら」

「お遊びには付き合ってやろう。しかし国王、いや…姫と呼ぶべきか。貴様が死ねばこちらの勝利で、貴様は私達の敵ということを忘れるな。」

「やだな、あれから何年経ったか知らないけど。死ななきゃいいんでしょ？返り討ちにしてもいいんでしょ？」

姫なんて似合わないよ、殺人を繰り返す姫サマなんて怖くて怖くてかなわないや！そう付け足して私は笑う。面倒臭い、こんな明るく振る舞うのってめんどくさいんだね。ああでも、こいつらが死ぬまでは続けないとなあ。そっちの方が国王っぽいし。そう言って地下室の扉を開ける。その瞬間に飛んで来るであろう銃撃を私はひらり、と右に避けた。この後の手も私は知っている。そのまま後ろに詰めてその右手を狙って蹴りをいれる。放たれた銃弾はあらぬ方向に飛んでいった。二人。いつの間にか赤いマフラーの人は地下で待ち構えていて、蹴りを躱した総統は素早く拳銃をリロードして持ち直す。

「二度も同じ手を喰らうと思った？残念！ああ、でも流石に三対一は不利だなあ…ねえ、そこの緑の人。んー、緑髪の人？お仲間さん呼んできていいから今は早く何処か行ってよ！」

「でも総統と赤マフラーのお前は駄目。ここで今、殺してやるから。」

復讐心が心を焼き尽くした。