どうかいつまでも君と笑っていられますように ページ12
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「・・・・よぉ、ゴリラ女」
『ひっどい言い草』
私が死んでからもう10年。墓石の前に君は持ってきた花束をぶっきらぼうに置いた。
『そんなんだからいい歳して結婚も出来ないんだよ』と嫌味交じりに呟けば、聞こえてるみたいに君は言った。
「あぁ。多分俺ァ、一生結婚なんて出来ねぇや」
哀しげに、優しげに目を細めて言う君。それがどういう意味か、私は分かってる。
『・・・・馬鹿だなぁ、本当』
私も、君も。
会えない相手のことなんて、忘れちゃえば楽なのに。楽になりたいけど、忘れたくなくて。
わがままな私達は、きっと一生幸せになんてなれない。
でも、私は君に笑ってて欲しかったんだよ?
「一人じゃ、笑えねぇよ」
君は泣き始めた。私が死んでから、泣いてばっかりじゃない。
慰める事も、馬鹿にすることも出来ないこの体。でもね、最近時々消えちゃうんだ。そろそろ本当に成仏かな。
ねぇ、今日くらい、正直になっても良いよね?
私は、
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『君一人だけ幸せに笑うなんて、絶対に許さないよ』
あれから心から笑う事が出来なくなってしまった君がまたいつか笑う事があるとすれば、それは、その時は、また私の隣だ。
その時は、今度こそ一人になんてさせないから。君も私を一人にしないで。
『さようならは、必要無いよね』
だって、これで最後なんかじゃないんだから。
幽霊は涙を流しながら、幼い悪戯っ子の様に笑って、
『またね』と笑顔で手を振った。
長くに渡って幽霊を現世に縛り付けていた鎖は消え、幽霊の体は蛍のような淡い光を放ち、徐々に消滅していく。
愛する者に嘘を吐いたが為に、私はもう会えぬ愛する者を永遠に想うという罰を受けた。
なのに何故、私は消えるのだろう。消えてしまえば、それは永遠じゃ無い。
なのに、一体何故________
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(あぁ、そっか)
幽霊は気付いた。自分はようやく、許されたのだと。
幽霊はついさっき、ずっと隠していた本音を語った。嘘を撤回して。もしかしたら、それが関係あるのだろうか。
(まぁ、神様の考えなんてわかりゃしないけど)
・・・何の為に私は消える?君とまた会う為私は消える。生まれたときだってそうだったろう?
君と出逢うため、私は生まれたんだ。
幽霊はもう自由の身だ。幽霊は最後にクスリと笑ってそっと目を瞑り、光の中に身を委ねた。
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中島朱音(プロフ) - この作品見て泣いてしまいました。でも、読んでよかったです。これからも頑張って下さい。 (2018年9月24日 0時) (レス) id: 6eda1f4a42 (このIDを非表示/違反報告)
ねこっち - 素直に泣きました。この作品に出会えてよかった。 (2018年6月24日 21時) (レス) id: e5c0089dc7 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - まめだぬきさん» ありがとうございます!こんな作品でお涙頂けるとは光栄の極みです!実はこの作品の沖田君視点の続編もどきを作ろうと思っています。出来次第載せるので、興味を持って頂けたならどうかそちらも是非! (2018年5月13日 23時) (レス) id: 76bba592ea (このIDを非表示/違反報告)
まめだぬき - もう思わず泣いてしまいました。こんな切ないお話、今までに読んだ事無かったです。これからもぜひ頑張ってくださいね! (2018年5月13日 14時) (レス) id: 200b58f8b6 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 雛菊さん» 応援ありがとうございます!あらかた書き終わりました!一応前回よりハッピーエンド要素強くしてみました。その結果何処かで見たことのあるようなありきたりストーリーが出来上がりました。結論、死にたい。(←あ、いや、本当に自殺したりしないんで安心してください) (2018年5月7日 15時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミズキ | 作成日時:2018年3月26日 10時