14-言えない ページ14
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今日はレアチーズケーキを作ってみた。キッチンで作業している間、悟さんがカウンターに頬杖をついてじーっと見てくるものだから、つい視線を感じて緊張してしまった。
奥の席で待っててもらって大丈夫ですよ、と言おうとしたけど、悟さんがあまりにもニコニコしているから言えなかった。ケーキを作る工程を見るのが好きなのかな。
やっと完成させ、一切れ取って悟さんの元へ持っていく。カウンターで待ってた悟さんは「待ってましたぁー」と舌鼓を打つ。そんな好反応を示してくれるのが嬉しくてクスッと笑う。
悟さんにショートケーキ以外を食べてもらうのは初めてで、実はちょっとドキドキしている。早速悟さんはパクリと一口食べる。
「ど、どうですか?」
「……うん、美味しい!全然お金取れるレベル」
「ふは、本当ですか?」
「この僕が言ってるんだから間違いないよ」
それはお世辞ではないのだろう、悟さんは5分足らずで平らげてしまい、「おかわりもらっていい?」ともう一切れと要求してきた。こんなに嬉しい反応をしてもらえて、私はホッと胸を撫で下ろす。
悟さんのおかげで自信が持てた。
今度店主にレアチーズケーキも作らせてくださいって言ってみようかな。
悟さんの隣で私も一切れ食べる。
「定休日まで食べれるなんて最高……」
「ふふ、よかったらまた来てください。定休日はほとんど店でケーキ作りの練習してるので」
「エッ。いいの?!」
「むしろ悟さんが試食品でもいいって言ってくださるならいつでも大歓迎です!」
笑顔でウェルカムな雰囲気を全開にすれば、悟さんは両手で顔を覆い、「尊い…」と小声で何かを呟いた。
「あ、でも定休日までケーキ作るのって大変じゃない?ちゃんと休み取れてる?」
「私は定休日以外にも休みの日がありますし、それにさっきも言いましたけどケーキ作ってる時が1番楽しいので」
「そっか、すごいねAは。仕事も楽しくこなして、家族との時間もきちんと取って。僕とは大違いだ」
…
あ、そっか。
悟さんは私が旦那とうまくいってるって思ってるんだ。
私が前に悟さんと奥さんのことについてアドバイスなんかしたから。
実際は時間を取るどころか、一度も会ったことすらない、なんて。
あと半年足らずで離婚しなきゃいけない、なんて。
そんなの言えるはずがない。
「じゃあ、僕そろそろ帰るね。今日ありがとう」
「…こちらこそ、ありがとうございました」
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1 - ぱぅちさんの作品見たんですが今ハマってしまいました😁これからも他の作品を頑張ってください🙏👍 (11月4日 17時) (レス) @page37 id: 053afa639a (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最近呪術廻戦の夢小説にハマったのですが、このお話、めっちゃ好きです!!ありがとうございました!! (6月30日 17時) (レス) @page36 id: c2b1544657 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 良い感じにお互いがすれ違っていて凄く素敵なストーリー構成でした! 恋をした所の描写を丁寧に書く事で読む内にどんどん世界観に引き込まれていきました。とても綺麗なお話をありがとうございました! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ふぅさん» 今作では五条さんの一生懸命な片思いを描けたかなと思います!笑 こちらこそ、最後までお読みくださりありがとうございました…!😭☺️ (2022年1月1日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
ふぅ(プロフ) - 完結、お疲れ様でした。ずっと柔らかい雰囲気でとても好きなお話です。次回作も楽しみにしています! (2021年12月23日 23時) (レス) @page37 id: 56676c275e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年7月31日 22時