15-熱烈なラブコール ページ15
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日々、募るようになった違和感。
でもその違和感の正体に気づいてはいけないと、第六感が告げていた。
初めて定休日の日に試作品を振る舞ってからというもの、毎週ではないが悟さんは隔週くらいの頻度で月曜日もやってくるようになった。
お店が営業している時よりも、彼は楽しそうに過ごしていた。
出したケーキは全部美味しいと褒めてくれるかと思いきや、「もう少し柔らかめにしてもいいんじゃない?」等、アドバイスもくれた。こんな風にしっかりとダメ出しをしてくれるのは、見習いの身としては有難い。
少し経つと「Aも座りなよ」と彼が椅子を引いてくれる。
その距離が徐々に近づいていることに気づいたのはいつからだったか。最初は人1人分のスペースを空けて座っていたのに、今では肩が触れそうなくらいに近い。
そして、
「今日もありがとう、ごちそうさま」
微笑みながら御礼を言う彼のサングラスから覗く瞳に、熱がこもっているのにも、気づいてしまった。
ドキリと胸が高鳴る。
違和感。
悟さんがこんな目を向けてくるのはどうして?
違和感。
悟さんがこんなに真剣に私のケーキにアドバイスをくれるのはどうして?
違和感。
悟さんがこんなに足繁くお店に通ってくれるのは……。
だめ、気づいちゃいけない。
気づいてもきっと、誰も幸せにならない。
私は必死で知らんふりをしようとする、のに。
「A、来週の日曜日まででどこか空いてる日ない?」
「え、……どうしてですか?」
「映画のチケット。2枚貰ったんだけど、一緒にどうかなって。いつものお礼に」
悟さんが気づかせようとしてくる。
その度に私の心は揺れ動いてしまう。
悟さんは財布から取り出した映画のチケット2枚をひらひらと揺らす。
呑まれてはいけない。
だって、私も悟さんも結婚してるから。
「……すみません、行けないです」
「!そんなに忙しい?」
「いえ、空いてる日はあるんですが」
「じゃあ」
「その、御礼とか本当に大丈夫なんで!むしろいつも試食してもらって御礼しなきゃいけないのは私の方っていうか」
「なら御礼に映画付き合ってよ」
「…」
「ね、それならいいでしょ」
悟さんは一切引くつもりがないらしい。
「はい決定!」なんて言いながら、早速スマホでスケジュールを確認している。
『映画は奥さんと行ってください』そう言えなかった時点で、私の負けは確定していたのかもしれない。
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1 - ぱぅちさんの作品見たんですが今ハマってしまいました😁これからも他の作品を頑張ってください🙏👍 (11月4日 17時) (レス) @page37 id: 053afa639a (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最近呪術廻戦の夢小説にハマったのですが、このお話、めっちゃ好きです!!ありがとうございました!! (6月30日 17時) (レス) @page36 id: c2b1544657 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 良い感じにお互いがすれ違っていて凄く素敵なストーリー構成でした! 恋をした所の描写を丁寧に書く事で読む内にどんどん世界観に引き込まれていきました。とても綺麗なお話をありがとうございました! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ふぅさん» 今作では五条さんの一生懸命な片思いを描けたかなと思います!笑 こちらこそ、最後までお読みくださりありがとうございました…!😭☺️ (2022年1月1日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
ふぅ(プロフ) - 完結、お疲れ様でした。ずっと柔らかい雰囲気でとても好きなお話です。次回作も楽しみにしています! (2021年12月23日 23時) (レス) @page37 id: 56676c275e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年7月31日 22時