022-嘘つき ページ23
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「チッ……めんどくせェ」
ローは冷たくそう言い放ったが、私が泣いている間、背中を優しく叩いてくれた。
言葉には見えない優しさが更に涙腺を刺激する。
私はこれまで泣くのを我慢するようにしてきたから、
涙の止め方がわからなくて、そうなるともうとことん泣き続けるしかなくて。
結構時間かかったと思うし、
人目について恥ずかしかったと思う。
それでもローはずっと側に居てくれた。
見捨てることなく、手を動かし続けた。
言葉なんていらなかった。
ローも多分、私の家族の事情を知っていて、同情してくれてるのは学校の先生とも一緒だけど。
ローは泣く私に声を掛けなかった。
ただ背中をさすって、隣にいた。
その無言の同情が、心地良かった。
赤ちゃんのように泣いた私がようやく落ち着きを取り戻したのは、泣き腫らして目がヒリヒリと痛み出した頃だった。
「…ありがとう、」と声を絞り出して御礼を言えば、ローは以前のように私の頭を乱暴に撫でた。
そしてニヤリと口角を上げると、私の腫れた目を見て一言。
「不細工な顔だな」
「……それ女の子に言うこと?」
悪い顔をしてるもんだから何を言うかと思えば。
泣いたばかりの女子に言うことじゃないよね!
呆れて溜息を吐く。
「おれは正直者なんだ。思ったことはすぐ声に出る」
「もう!優しいと思った矢先にこれなんだから!」
「生憎だが、おれは優しくない」
嘘つき。
だって本当に優しくないのなら、
「ほら、ボーっと突っ立ってないで、帰るぞ」
こんな風に手を引いてくれたりしない。
そもそも優しくないなら、ローはとっくに一人で帰っていたはずだ。
年上の彼が引いてくれる手を軽く握り返す。
「……嘘つき」
優しいよ、ローは。
彼の背中の先に見える燃えたような夕陽が、腫れた私の目には痛いくらい眩しかった。
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アマシギ - 素敵すぎる…!!どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます!! (2022年9月23日 22時) (レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます! (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…! (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…!完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです( ; ; )この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…!ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして!とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました(笑)ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、! (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2019年7月10日 20時