021-見つけた泣き場所 ページ22
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「作文の宿題を出します。明日持ってきてください」
「えーっ」と不満げな声があちこちから上がる。どうやら面倒だと思うのは人類共通の感情みたいだ。
かくいう私もその人類共通の感情を持っていて、態度には出さないが心の中でブーイングしていた。
ざわつく教室は先生の手を叩く音によって落ち着きを取り戻した。
「はい、騒がさない！嫌でも書いてもらうからね」
今日はさっさと宿題終わらせて、
コラさんとお喋りしたかったのになあ。
生憎文章を書くのは苦手なのですぐには終わらない。
先生は黒板に“テーマ”と書き、「書いてもらうテーマは」と言ってから、肝心のテーマを付け加えた。
「“家族”についてです」
先生が告げたテーマを頭の中で反芻すると、
すうっと耳に届く音が遠のいていった。
膝の上においていた手に自然と力が込もる。
まるで世界から自分だけが取り残された気分だった。
ママはもういない。
私が家族と呼べる人は、この世界には、もう、
……どこにも、誰も。
一人になった世界で自分の鼓動の音だけがよく聞こえる。命を刻む音。
ママのいない世界で、私だけが生きている。
コラさんに会って心の傷にはかさぶたができたはずなのに、それが今更剥がれていく。
帰りの会の後、先生に呼び出されて「Aちゃんはその、宿題、無理しなくていいからね」とフォローされたけど、それは傷口に塩を塗っただけだった。
『家族がいない』
『かわいそう』
優しさの裏に残酷な同情が垣間見えて、もうとにかく放っておいてほしかった。関わりたくなかった。
余計なお世話なの、
本当の家族がいないからって不幸なわけじゃない。
可哀想だと見下ろされるのが、何よりも……
やけに重たく感じるランドセルを背負って、夢中で走った。
無意識に彼を探した。
彼が今、ここにいるはずなんてないのに。
私の幸せを早く見つけに行きたかった。
「……A？」
名前を呼ばれて弾かれるように振り向く。
走りまくった反動で、肩で大きく呼吸をする。
そこにいたのは、私が探していた彼ではなかったけど、
「……ロー」
「何してんだ、んな息切らして」
ローを見た瞬間、安心したように全身の力が一気に抜けて、
我慢の塊が涙となり、ぽろぽろと頬を滑り落ちていった。
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アマシギ - 素敵すぎる…！！どの作品もとても優しさあふれるお話ですね…。応援してます！！ (2022年9月23日 22時) (
レス) @page44 id: 4cd718819a (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最っっ高です、、、素敵な作品に出会えました。本当にありがとうございます。これからも頑張ってください。応援してます！ (2022年7月20日 20時) (レス) @page44 id: 70b28d3e93 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 泣いた…。めっちゃ素敵なお話でした…。ありがとうございました…！ (2021年6月25日 19時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - ゆゆさん» わわわ、ありがとうございます…！完結してしばらく経ってもコメントを頂けて嬉しいです（ ; ; ）この小説では如何にしてコラさんと夢主の距離(家族としての)を縮めていくかめちゃくちゃ試行錯誤して考えたので、そう言ってもらえて嬉しいです…！ありがとうございます (2020年8月6日 17時) (レス) id: 755637e22b (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！とんでとない素敵な作品に巡り会えました・・・読み終えた後、心がめちゃくちゃぽかぽかしました、最高です......(TT)特に作文のシーンなんかは感動しすぎて泣いてしまいました（笑）ぱぅちさんの小説、とても大好きです。これからも応援しております、、！ (2020年7月8日 0時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年7月10日 20時
