13-束の間の幸せ ページ13
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「あの、さ。唇強く噛みすぎたから怒ってるんだよね?それは、本当にごめんなさい」
一定の距離を保って、頭を下げる。
まずは許してもらわなきゃ、次に進めない。
伏黒くんが口を開いた気配がして顔を上げる。
「違う」
「え」
「怒ってんのは、……や、まぁ、そう言われればそうなんだけど、そうじゃねぇっていうか」
がしがしと頭をかきながら困ったように言う伏黒くんは歯切れが悪い。言うか言うまいか迷っているようだ。つまりどういうこと?はっきりして欲しい。
「じゃあ何に怒ってるの?」
真っ直ぐに問いかければ、やっと口を割る決心をしてくれたようで。長い長い溜息を吐いてから、目元を朱に染めて白状した。
「……キス、俺とすんの嫌がっただろ」
「へ……?嫌がったわけではないけど」
「……嘘。なら何で噛むんだよ」
「あれは息苦しかったのにやめてくれないから……!」
ていうから私、最初に言ったはずだ。
「嫌じゃない」って。
なのに何で伏黒くんは、……。
混乱しかけたところを、五条先生のアドバイスを思い出して落ち着きを取り戻す。
そうだ。言葉にしないと伝わらない。
伏黒くんは何も言ってこないけど、私だって何も言ってない。人のせいにするのは無責任だ。
覚悟を決めて、彼の顔を見上げる。
「伏黒くん」
頬に手を添えて、それから精一杯背伸びして、初めて自分から口付けを。
予想以上に恥ずかしかったから、すぐに離れる。
「嫌じゃないよ。嫌なんて思ったことない」
目を見開いた伏黒くんの顔から耳までがじんわりと熱を持っていく。
「好きだから。伏黒くんのこと、好き」
決死の告白。
放課後の教室はやけに声が響くから緊張感が増す。
胸が苦しい。緊張で1秒1秒が長く感じる。
言ってしまった。
後はもう伏黒くん次第だ。
イエスかノーかその2択しかない。
……って、思っていたんだけどな。
伏黒くんの表情が徐々に柔んでいく。
そしてさっきとは逆で、彼が私の頬に手を触れる。
「好き、伏黒くん」
「……うん」
夕焼けの光を浴びながら唇に待ち侘びた感触が降ってくる。
胸が温かい光で満たされていく。
これが幸せっていうのかなって思った。
…
て、ちょっと待って。
私の告白に「うん」って。
「うん」だけって。
そんなのあり?
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しろりん(プロフ) - 私もこのお話大好きで、何度も読み返してるんですが…ちょこっとだけ、おまけ程度に夢主ちゃんが恵くんの事を『伏黒くん』じゃなくて名前で呼んでるお話読みたいです…2年前に完結してますけど…気が向いたらでいいので…。😳 (2023年4月25日 17時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
ささき(プロフ) - とても楽しく読ませて頂きました!これからも応援しています。 (2021年2月26日 18時) (レス) id: 0a7371db4e (このIDを非表示/違反報告)
夜空の星 - 最高でした!新作も楽しんで読ませてもらってます! (2021年2月21日 0時) (レス) id: ab019124cf (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - かえさん» 暖かすぎるコメント頂けて嬉しいです〜!( ; ; )シリーズ化は考えていませんでしたが、書くの楽しそうですね!もしネタが浮かんだら書いてみようと思います!素敵なご意見ありがとうございます(^^) それと最後までお読みくださりありがとうございました! (2021年2月18日 20時) (レス) id: 4a1d1da0e2 (このIDを非表示/違反報告)
かえ(プロフ) - 本当に面白かったです!!毎日更新されるの今か今かと楽しみにしてました(笑)ぜひぜひ彼氏面してくるをシリーズ化して欲しいです、、!五条先生や他の人もみてみたい、、! (2021年2月18日 0時) (レス) id: 26e6a6e1c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぅち | 作成日時:2021年2月11日 14時