28-出会い(8) ページ28
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大切な人の危機に何もできない無力な自分に、私はもうひたすら泣くしかなかった。謝る医者の元で泣いて泣いて、目が腫れるくらい涙を流した。
そうして澄み切った視界は清々しいものではなかったけれど、立ち止まってる暇もなかった。
無力なまま、終わってたまるものか。
私は私にできることをするんだ。
パン、と一回自分の顔を叩く。
店主に事情を話して、次の日から酒場での仕事はお休みさせてもらうことにした。店主は私の母と古い付き合いなのでいくらでも休みなさいと言ってくれた。
私は日中はできるだけベットの上から動けない母の側にいて、朝と夜に泥棒活動でお金を貯めた。正直酒場で働くよりこっちの方が手っ取り早いのだ。
しかし盗む頻度が増えると、お店側も対策を練ってくるようになる。出入り口に警備を配置したり、映像電伝虫を置いたり。
失敗するリスクが高くなったって、やめるわけにはいかなかった。私が立ち止まったら母はどうなる？
そんな不規則な生活がしばらく続いた。
もう例の海賊達と会うこともなくなっていた。
当たり前か、彼らは酒場にしか来ないのだから。
バンッ
静寂の闇に包まれた夜に、忌々しい銃声が轟く。
発砲された銃弾が腕を掠め、ぽたぽたと血が流れていく。
流血した箇所を抑え、火傷するような痛みに顔を歪める。
「アイツだ！あの黒パーカーの奴が金を盗みやがった！！」
後ろから迫ってくる無数の提灯の灯り。
盗んだ金を入れた風呂敷を脇に抱え、痛みに耐えてとにかく走り出す。
逃げなきゃ。もっと、もっと遠くへ。
迷路じみた路地を庭のように走り抜ける。
それでも追いかけてくる声が消えない。
全員を撒くことはできない。
その時、小石に躓き、金は落とさなかったものの豪快に転んでしまった。でこぼこなアスファルトに擦れて、膝が血まみれになる。
「犯人はそっち行ったぞー！」
近づいてくる気配に、心臓が震える。
やばい、どうしよう、絶体絶命。
絶望の崖に立たされ、呆然と座り込んでいると。
突如、青い透明なサークルに囲われた。
なにこれ、と思う暇もなく、
私の姿は路地から消えた。
そして何故か、近くの家の屋根の上にいて。
「久しぶりだな、A」
月明かりをバックにわざとらしく口角を上げた船長さんが立っていた。
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
