29-出会い(9) ページ29
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何故いきなり自分がワープしたのか、船長さんがここにいるのか、疑問は浮かんだけど、撃たれた痛みと転んだ痛みでそれどころじゃなかった。
立つと膝に力が入らなくて震えた。
自然と呼吸が浅くなり、肩が上下に動く。
「何日も酒場に来ねェから何があったのかと思えば」
「……別に、あんたには関係ない」
酒場で働く時とは違い敵意全開な私に、船長さんはほう？と挑発的な顔をする。
母の病気のことと怪我したことで、苛々して仕方がなかった。
「仮にも助けてやった相手にその態度はないだろう」
「頼んでない。あんな奴ら、助けてもらわなくても撒けた」
「そう言う割には随分と無様な姿じゃねェか」
「____うっさい！とにかく、こんなとこでのんびりしてる場合じゃ……」
「母親が病気なんだろ」
話してもいない事実を言い当てられ、瞠目して彼を見つめ返す。
どうしてそれを、声にならない疑問に彼は答える。
「店主に聞いた」
「…」
「この島じゃ治せる医者もいないっつーことも」
「おれなら治せる」船長さんは迷いなく言い切る。
その目に嘘は混ざっていなかった。
いくら怪我して冷静じゃなくたって、人の言の葉の真偽くらいは判別できる。
『死の外科医』
店主から教えてもらった彼の異名が蘇る。
これが本当にただの医者なら、私はすぐにでも縋り付いた。
「……海賊を、信用しろって言うの」
「海賊の世界にも通すべき仁義くれェある。……そうだな、お前がおれの船に乗るってんなら、母親は助けてやってもいい」
これは、悪魔の取引だ。
彼は私の一番大切なものを知ってる上で、それを人質にした。
残る力を振り絞って睨みつけるも、船長さんは全く怯まない。
「別におれはお前の母親がどうなろうとどうでもいい。ただ、お前が欲しいだけだ」
視界が、思考が、彼に侵食されていく。
……だめ、呑まれてはいけない。
だって海賊は悪い奴らなんだ。父を殺した。そして母を悲しませた。そんな奴ら、私が信用するわけには。
その時だった。
『ごめんね、もうそろそろダメみたい』
そう言って哀しげに笑った母が浮かんで。
ひゅっと喉から掠れた音がする。
爪が食い込むほど拳を握る。
血だらけの膝を地面に着き、……唇を噛み締めて頭を下げた。鉄の味がする。
「……母を、助けてください」
「じゃあおれの船に乗れ」
「…………はい」
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涼野紫乃(プロフ) - 完結おめでとうございます！作者様のローオチの作品は他にも読ませていただいてますが毎回話の構成、終わり方が最高で泣かされてしまいます。新作も絶対読みます！これからも頑張ってくださいm(_ _)m (2020年8月16日 8時) (
レス) id: 5f142ceaa5 (このIDを非表示/違反報告)
てい。(プロフ) - 完結ご苦労さまです！更新まだかなと楽しみに思えるほどこの小説が好きでした！1番が気になっています、気になりすぎて早く読みたいくらいですが…これからも頑張ってください！応援してます (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6af5281e1b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぅち(プロフ) - 皆様ご協力頂きありがとうございました…！一人一人にきちんとお返事したいところですが、有り難いことに多くの方にご意見をもらえて…泣 でもコメントや感想はすべて読ませていただきました！本当に温かいお言葉をもらえて嬉しいです！今後もよろしくお願いします…！ (2019年9月24日 17時) (レス) id: fbe06363c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろぴろ(プロフ) - 完結お疲れ様です★遅くなりましたが、3番が読んでみたいです(*´∀｀) (2019年9月24日 11時) (レス) id: 5ce8d72b22 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - 2.3どちらも捨てがたいです(ﾟ´ω｀ﾟ)！完結お疲れ様でした！ (2019年9月24日 1時) (レス) id: e1ea64eec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぅち
| 作成日時：2019年9月8日 18時
