とある老いぼれの話。【知恵の塔、ムネモシュネ図書迷宮】

貴方の見た目の話。 ページ1

ふふ、儂の見た目が気になるかえ？
龍なのにヒトの姿に化けているとな。


なら童よ。聞くが、


貴様はこの図書迷宮のどの司書達に違和感を覚えた？


虫殿かえ？海月殿かえ？それともあの犬の姉弟かえ？

将又吸血鬼殿かえ？


誰にしろ、人間とは掛離れた見た目よのう。
童。そのうちの誰かに、貴様から話し掛けたことがあるかえ？

そうよのう。恐ろしゅうて話しかけられもせんじゃろう。

人間とは、そういう生き物だわえ。

他の生物よりも少し知能が高うているだけで、権力やら金やらと面倒な物を作りよって、
そのくせ自分達よりも知能やら文明やら見た目の見目麗しさやらが低ければ卑下し罵倒し、
反対に高けりゃ信仰し崇拝し。

人間とは、愚かな生き物だわえ。

自分らが一番と思うちょる。

本当なら同じ生物同士、一も二も無いと言うに。

そう言う貴様らはのう、童。見た事の無いものを怖がるのじゃよ。


考えてみい。

儂が本来の馬鹿でかくて貴様らの言う「恐ろしい」龍の姿で居ったら、貴様はどう思う？

今こうして話し掛けるには至らんじゃろう。



そう言う事よ。



儂も老いぼれよ。話し相手が居らんというものは、流石にくるものがあってのう。
こうして貴様らの相談がてら、儂の話をしてやるのよ。

最下層の談話室に行くのも良いが、何せ階段が辛うてのう。
人間の脚というものは不便じゃ。
また天高く飛びに行きたいのう。





____________そうか、童。腑に落ちたか。

ならそれで良い。


またここにおいで。

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