02 ページ44
｢……え?｣
強めに､Aはそう叫んだのだ｡
彼女がこんな風に言うのはかなり稀だった｡少なくともツナにこんな態度をとったのは､Aがボンゴレに来た日以来じゃないだろうか｡
｢ツナさん､ごめんなさい｡でもお願い｡カーテン､閉めたままにして｣
さっきとはうって変わって懇願するような声色で彼女は言った｡
さすがにこれでカーテンを剥ぐほど､ツナは悪人ではない｡だから彼は近寄る代わりに､近くにあったいすを引き寄せた｡
｢体調はどう?｣
｢うん､もう大丈夫｡……ごめんなさい､いきなり倒れたりして｣
｢謝ることじゃないよ｡ともかく､具合が悪いわけじゃないならよかった｣
その会話を境に､2人の間に沈黙の時間が生まれた｡
いつもならどちらかが黙っても､どちらかは口を開いているのに｡あんなことがあった直後だ､致し方ない｡
｢ツナさん｣
｢何､どうかした?｣
｢ツナ､さん｣
｢え?何?どうし｣
｢ツナさん､ツナさん､ツナさんっ……｣
何度も何度も､ツナの困惑などガン無視してAは名前を呼び続けた｡
そしてしばらくすると満足したのか､彼女はふうと息をついた｡
｢……終わった?｣
｢うん｣
｢何だったの､一体｣
｢なんかね､呼びたくなっちゃったから!｣
元気に答える彼女に対し､ツナはまだ戸惑いから抜け出せていなかった｡
｢ツナさん……あのさ｣
｢ん?｣
ワントーン下がったAの声｡嫌な予感がツナの背中を走った｡
｢私､私ね｣
嫌だ｡
その先を言わないでくれ｡
そんな願いも虚しく､Aが口にしたのは最も彼が聞きたくない言葉だった｡
｢タリアテッレに行きます｣
クロッケーをするためにチームを分けるとするだろ?
だけど分け方を失敗して､あっちのチームには1人メンバーが足りなくなっちゃったんだ｡こっちのチームは人数が多いから､1人抜けても大丈夫｡Aはこっちのチームのメンバーね｡
なあ､もしAだったらどうする?
ドンたちが来る前､ツナがAに尋ねた質問だ｡
あの時､彼女はどう答えるつもりだったんだろう｡
−−今のAなら､なんて言うのかな｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 24人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
