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｢あれ､何にも起こんないよ?｣
Aの言う通り､何か変わった点は見られないように思えた｡父親もハットもキョトンとしている｡
ただ1人､ドンだけが驚いたように目を見開いていた｡
スッとAの手をとると､これは……と小さく呟いた｡
｢どうかしましたか､ボス｣
父親の呼びかけにも答えず､ドンはリングを見つめ続ける｡釣られるようにリングに目を向けると､そこには｡
｢え……｣
目を凝らしてやっと見えるくらい小さな青い炎が灯っていたのである｡
驚くのも致し方ない｡そのリングはかつての雨の守護者が身に着けていたものだったのだから｡
｢信じられない……｣
絶句する父親に､ドンも同意するように頷く｡
ドンに仕えていた雨の守護者が亡くなって以降､誰もそのリングに炎を灯せはしなかった｡後継者候補が何人もいたにも関わらず､結局候補止まりだったのはそういう事情があったからこそ｡
｢純度の高い､良い炎だ｡今はまだ小さいが……育て方によれば十分見込みはある｣
｢ま､待ってください!｣
ドンがよからぬことを考えていることを悟った父親は､慌てて待ったをかける｡このままでは事が悪い方向に向かってしまう｡そんな予感がした｡
｢以前も話しましたが､俺は家族をこっちの世界に引き込むつもりはないんです｡こればかりは､いくらボスの命令だろうと揺らぐことはありません｣
強く固い意志が感じ取れる物言いだった｡しかし父親の鋭い眼光に負けぬようドンも気張る｡
｢ああ､分かっているよ｡しかしね､これだけの素質がありながらそれを見過ごしてしまうのは惜しいと思わないか?｣
｢……惜しくないと言ったら嘘になります｣
｢だろう?｣
｢しかし!｣
有利な方向へ傾いてきたと思った最中､父親は声を上げた｡
｢Aを渡す気はさらさらありません｣
父親のまっすぐな瞳を見て､ドンは諦めたようにため息をついた｡これはもう､彼の意地だと察したのだろう｡
｢……分かった｡これ以上の駆け引きはもはや無意味だ｡だがもし､少しでもその気になったのなら言ってくれ｡こちらとしてはいつでも大歓迎だからね｣
その答えを聞きAたちは安心して帰っていった｡
しかし物語はそこで終わらなかった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
