アリス、運ばれる 01 ページ5
カチ､カチと時計の秒針の進む音だけが部屋の中に響く｡他の音がそれを邪魔することはない｡
ゆっくりと時が流れる談話室で､Aは心地よさそうに眠っていた｡近くを通りかかる者はおらず､彼女の睡眠を邪魔するものは何もない｡
少し肌寒いのか､時折ブルリと身を震わせてはまたスヤスヤと寝息を立て｡
そんな彼女の上に影がかかる｡まじまじと物珍しげに眺めたかと思えば､影をかけた少年はそっとAに手を伸ばした｡
｢十代目､今日Aを見かけました?今日は修行休みのはずですよね｣
｢A?うーん……｣
獄寺の問いにツナは考えこむようなポーズをとる｡
見かけることには見かけた｡仕事部屋に来たからだ｡その時にちょっとした会話もした｡
だがそれ以降見かけていない｡
｢見かけはしたけど､それ朝の話だしなあ……あ､そういえば｣
｢ツナ､頼まれてたやつできたぜ｣
ツナの話を遮るように山本が部屋に入ってきた｡手には書類の束､あとはツナが確認するだけだ｡
書類を手渡した山本は空のソファーの方に目を向けて､不思議そうな声を上げた｡
｢ありゃ､Aまだ戻ってねえの?もうちっと探険するつもりなんかな｣
｢探険だあ?｣
獄寺が少しばかり呆れたように言葉を繰り返すが､山本はいたって真面目に言ったらしい｡代わりにツナが説明をしてやった｡
｢今日はボンゴレ城を探険するんだって｡何気に広いから､前から色々巡ってみたかったらしいんだけど｡立入禁止には入るなって言ってあるし､迷子になっても誰かしら対応してくれるから心配はないと思うんだけどさ｣
そうは言いながらもどこか不安そうなツナ｡
｢さっき見かけた時は楽しげにしてたぜ｡どっかで休憩したら戻るとか言ってたけど……まあ大丈夫だろ｣
山本はのんきに笑って部屋を出ていったものの､やっぱり彼女を心配しているようだった｡まあ前例が前例なので致し方ないだろう｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
