アリス、話を聴く 01 ページ35
｢おや､2人は知り合いだったのかい?これは驚いたな｣
ドンが驚いたように言うものだから､Aは危うく彼を睨みつけそうになった｡
ドンが知らないわけがない｡
Aとハットの関係を｡
ドンとハットが上司と部下であることは､Aにも何となく予想できた｡忠実なハットが決闘したことはともかく､Aに会ったことをドンに報告しなかったとは到底考えにくい｡
それにも関わらず､いけしゃあしゃあと驚いたと言いのけてしまう彼を憎たらしいと思わずにはいられなかった｡
｢大丈夫かい?顔色が悪いようだけど｣
｢はい……大丈夫､です｣
Aは混乱で頭がぐちゃぐちゃで､そう答えるだけで精一杯だった｡
そんな彼女をじっくりと見下ろして､小さくほくそえんだ｡もちろん､Aはそれに気づくはずもない｡
｢……立ち話もあれです｡とりあえず座りませんか?｣
それまで空気と化していたツナが口をはさむ｡
パンク寸前のAにとってその言葉は救い以外の何でもなかった｡
｢デーチモもそう言ってくれていることですし､ありがたく座らせてもらいましょう｡ハット､早く来なさい｣
柔らかい話し方から一転し､ハットに命令する口調は強いものだった｡
それも相まって､Aの動揺は消えてくれそうになかった｡
帽子屋さんまで連れてきて､ドンは一体何を考えてるんだろう?
Aにはドンの考えがみじんも読み取れなかった｡
警戒を緩めないよう細心の注意を払いながら､Aはゆっくりとソファーへ足を進めた｡
｢ふう……さてと｣
ソファーに腰かけ息をついたドン｡
Aは何を言われても狼狽えないぞと意気込むと､小さくつばを飲み込んだ｡もうこの時点ですでに巻き込まれているような気もするが､ここでつっこむのは無粋というものだろう｡
ドンの口から何が飛び出るのか｡
Aが待ちかまえていると､ドンは優しく微笑んだ｡
｢ふふ｡Aちゃんはやはりお母さんに似て美人さんに育ったね｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
