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｢何で……｣
呆然と立ち尽くすAに声をかけようとしたツナだったが､その役目は客人に奪い取られてしまった｡
｢こんな騙すようなことをしてすまないね｡でも､こうでもしないと君は会ってくれないと思って｣
かつて彼女の父親が慕っていた男が､そう言って困ったように笑う｡
そんなドンににAがとった行動｡それは非難でも号泣でもなく｡
｢いやだなぁ､ドンってば｡そんなことしなくても､会いましたよ?｣
愛想笑いだった｡
彼女はよく笑うし､様々な笑顔を浮かべる｡ツナはその豊かなバリエーションを毎日見てきた､なんならすべて知り尽くしているとさえ思っていた｡
なのに初めて見るその笑い方に､ツナだけでなくドンでさえ､背筋に戦慄が走った｡
｢それでご用は何でしょう?とりあえず座ってお話を聞きます｣
いつもの無邪気さが失せ冷静に事を進めようとするAだが､頭の中はある感情でいっぱいだった｡
――早く帰れ｡
タリアテッレファミリーに関わるとロクなことが起きない｡
平和で幸せなボンゴレでの日々を壊されたくない｡
ただその一心で｡
だからとっとと用件を済ませて帰ってもらおうという､彼女なりの策略だったのである｡
｢ああ､その前にもう1人いいかな｡できれば彼にも会ってほしくてね｣
｢いいですけど……｣
深く考えずそう答えてしまったことを悔いるのはすぐのこと｡
ああ､獄寺さんに見直しは何度もしろって言われたのに｡焦ると逆に間違えるんだって｡
今､おんなじ感じだよね?
今日Aが目を見開くのはこれで2回目だった｡
｢……嘘､何で?｣
トレードマークのポークパイ･ハットをかぶって現れたのは､前に会ってそう経ってはいない少年｡Aは彼がそちら側の人間だと知らなかった｡だから疑問符が彼女の頭を埋め尽くすのも仕方のないことだったのだ｡
ねえ｡
何でそっちにいるの?
｢帽子屋､さん｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
