アリス、惑う 01 ページ33
｢おっはようございまーす｣
本日も元気に登場してくれたA｡その様子を見てツナは少しばかり沈んでいた気持ちが救われた気がした｡
どうやら今日は誰も彼女を送ってくれなかったらしい｡
今日の担当は獄寺｡彼がサボるとは考えがたいが｡
｢あれ?獄寺くんは?｣
｢獄寺さんなら部屋で寝てるよ｡今日はお休みなんでしょ?｣
言われて思い出したらしく､そういえば……とツナは呟く｡
釣られて思い出したのかAは慌てて言葉を紡いだ｡
｢あの､獄寺さん疲れてるみたいだから起こしちゃ悪いと思って勝手に来ちゃったんだけど､やっぱだめだった!?ごめんなさい､一応メモは置いてきたけど｣
｢いや､そんなに謝ることないから｡獄寺くんのことを思ってやってくれたんだよね?｣
怒涛の勢いで謝り倒すAにストップをかけ､ひとまず落ち着かせることにした｡
質問にコクンと頷いたのをしっかり見届けてから、ツナは言葉を続ける｡
｢ならいいよ｡メモを書き残してきたなら獄寺くんも分かるだろうし｡むしろありがとな?獄寺くん､無理しがちだから｣
ぶんぶんと首を横に振り､大したことはしてませんよ!とAはアピールしてみせた｡動き1つ1つが全力投球である｡
｢あっそういえば!今日だよね､お客さん｡何時くらいに来るの?｣
｢ええっと……｣
急激な話題転換にツナは少し戸惑ったが､手帳をパラパラとめくり時間を確認した｡そして驚いた｡
もう間もなくだったのだ｡
｢あー……ごめん､もうすぐ来るみたい｡うっかりしてた｣
｢えー!?ちょっとツナさんたらしっかりしてよー!｣
もー!と本人なりに怖い顔をしているつもりなのか､頑張って目を吊り上げようとしていたがツナにはちっとも効かない｡だって可愛いだけだから｡
｢ねえ､ツナさん疲れてるんじゃない?ストレス?｣
一転して心配そうに覗きこんでくるAに､ツナは大丈夫だよと笑いかけた｡そうすればすぐに安心感あふれる笑顔が咲く｡
｢なあ､A｣
｢何､ツナさん?｣
｢こんなこと聞くのはおかしいんだけど｣
続けられた質問にAが答えることはなかった｡
訪問を告げるノック音が2人を呼んだからだ｡
心なしか嫌そうなトーンの入室許可にAが首をかしげる暇もなく､ドアがゆっくりと開く｡Aの目もそれに合わせて見開かれていった｡
｢……おいでくださり､ありがとうございます｣
｢いえいえ､こちらこそ急な変更にも関わらずありがとうございました｣
そこに立っていたのはタリアテッレファミリーボス､通称ドンだったのだ｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
