アリス、勘づく 01 ページ28
｢たっだいま〜｣
語尾に音符を見えるほどの上機嫌で､Aは帰ってきた｡若干呆れ気味のルッスーリアが後ろからついてくる｡
するとAの帰りを待ちわびていた構成員があちこちで声をかけてきた｡いかにここで彼女が愛されているか彼らの目を見れば分かる､だってどれも優しくて愛しいものを見るようだから｡
……本人は気づいてないみたいだけど｡
｢A｡おかえり｣
｢獄寺さん!ただいま｡ツナさんは?｣
ふにゃりと油断しまくった笑顔で､Aは獄寺に駆け寄った｡
｢十代目ならいつもの部屋だ｡荷物置いてからにしろよ｣
｢はーい｣
獄寺たちの会話を邪魔するのはしのびないと思ったのか､ルッスーリアはその場を去ろうとした｡しかし｡
｢ルッス姐?帰っちゃうの?｣
目敏くAがそれに気づいた｡足音を立てることなくそっと出ていこうとしたにも関わらず｡
勘が鋭いのか鈍いのか､相変わらずよく分からない少女である｡
｢ええ､この後仕事なの｡ごめんなさいね｡ツナちゃんによろしく伝えてちょうだい｣
ショボンとしながらも頷いたA｡そんな彼女のの目線までしゃがむと､ルッスーリアは優しく言った｡
｢そんな顔しないで?また来るから｣
｢……絶対?｣
｢絶対｣
Aは少し考えるように黙り込むと､おずおずと小指を差し出した｡ルッスーリアが首をかしげていると､
｢……指切り､して｣
とひどく小さな声｡なんだか可愛くてクスクスと笑いをこぼしつつも小指を差し出すと､彼女の小指が絡められた｡
｢ツナさん?入っても大丈夫?｣
控えめなノックの後に聞こえた高めの声に､ツナは受話器を置いて入室を許した｡
そっと覗きこむように顔を半分だけ見せたAに手招きすれば､嬉しそうに彼の机の側まで駆け寄った｡
｢おかえり､A｣
｢ただいまぁ｣
安心しきったように笑うAに対して､ツナはどこか思いつめたような目をしていた｡とは言っても､瞳を覗きこまない限り素人目にはちっとも分からなかったのだが｡
｢楽しかった?｣
｢え……うん!とっても!｣
Aはヴァリアー邸での出来事を細かく話した｡その表情はとても生き生きとしていて､刹那の違和感はもう吹き飛んだよう｡
一方ツナは彼女の話に相づちを打ちながら聞いていたが､どこか晴れない顔だった｡
｢……ツナさん｣
｢何?｣
楽しげに話していたAが突然言葉を切ってツナを見つめた｡じっと見つめてくる彼女に普段ならばおかしいと思うはずなのに､彼は普通を装って返事をしてしまった｡
｢何かあったでしょ｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
