アリス、通信する ページ27
疲労困憊｡
机に腕を投げ出して小さくうめく男にぴったりな言葉だ｡
そう､まさに現在の沢田綱吉に｡
卓上のカレンダーにチラリと目を向けた｡
まだだ｡Aが帰ってくるのは明日の昼｡今日じゃない｡
分かってはいるものの､何度も何度も無意識に眺めてはまたため息をつくのだ｡
そんな中､獄寺がノックして入ってきた｡
｢十代目､今お時間ありますか?｣
｢え?｣
やってきたのはどでかいテレビの前｡出張中の幹部から報告を受けたり､他のファミリーと会議したりする時に使うのが主である｡
一体何のために獄寺はツナをここに連れてきたのか｡疲れた頭でツナは考えてみたが､まったく思いつかなかった｡
｢じゃあ始めますよ｣
ザザ……と少しの間砂嵐がテレビを占拠していたが､少しすれば相手の顔がよく見えた｡
｢わっ!ツナさんだー!おーい､見えてる?｣
｢Aっ!?｣
そこに映っていたのはニコニコと笑顔で手を振るA｡思わず立ち上がるとシシシッと楽しげな声が聞こえてきた｡
｢やっほー沢田｡想像通りの反応どーも｣
｢な､何で……｣
ツナが困惑を隠しきれずに画面を食い入るように見ていると､Aが元気にお答えしてくれた｡
｢ベルさんがね､さぷらいずでツナさんを驚かしちゃおって!｣
｢そろそろAに会えない禁断症状が出てくる頃かと思ってさ｡王子やっさしー｣
｢ちょっとちょっと!準備したのは全部アタシなんだけど!分かってる?｣
ふざけた掛け合いに獄寺が若干イラついているのは分かったが､ツナはホッとしたように顔を綻ばせていた｡
よかった､元気そうで｡
｢ツナさん｣
｢ん?何?｣
Aに呼ばれて優しい顔で返事をするツナ｡彼女も釣られるように優しい笑顔を浮かべて言う｡
｢明日､帰るからね｡待ってて｣
バイバイと手を振るAを最後にぷっつりと画面は真っ黒になってしまった｡
｢あ!アイツら勝手に切りやがった!｣
｢獄寺くん｣
とうとうキレた獄寺にツナが静かに話しかける｡
｢何でしょう十代目｣
｢ありがとね｣
ツナからお礼を言われて獄寺は先ほどまで抱いていた怒りを完全に昇華させ､この日の業務を完璧にこなしたという｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
