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｢本気でやってってお願いしてるのに!何で?Aが弱っちいから?｣
ぷうっと頬を膨らませて文句を垂れるA｡見当外れも甚だしいな……と思いながらもリングは口をつぐんでいた｡
構成員たちは誰も手なんか抜いていなかった｡それどころではなかったからだ｡
手加減してあげよう､誰しもそう思って稽古にのぞむ｡しかしあくまでもそれは最初だけの話｡そんな余裕はあっという間になくなってしまうのだからさあ大変｡
Aはバジルとの修行でメキメキと力をつけていた｡だから隙を見せたら負けは確実で｡10歳にも満たない少女に易々と負けたとなれば､彼らのプライドにも傷がつく｡だから割と本気で取り組んでいた｡
しかし厄介なことに彼女は自分の急成長に気づいていなかったのである｡そのため､毎回毎回最終的に勝ってしまうことに不満を抱いていた｡
Aはそんなに強くない｡だから勝てるわけない｡つまり手加減された｡
Aはこの謎の方程式を本気で信じこんでいた｡本当のことをいうと､構成員たちがムキになっている自分自身に気づき我に返った一瞬の隙を彼女が狙っただけなのだが｡リングもそれには気づいていたが､彼らのメンツを保ってやるために口にはしないでいた｡
｢おまけにさ!1回稽古してくれた人はみーんな､もう1回お願いしてもやだって言うんだよ?そんなにA弱すぎるの?｣
それもそうだろう｡もう一度同じ思いはしたくないという気持ちの表れだ｡だってまた負けたら､今度こそメンタルズタボロに違いないから｡
｢誰か本気で稽古してくれないかなー｣
そうぼやいたAに､リングは少し考えこんでから言葉をこぼした｡
｢吾輩が､稽古をつけてやろうか｣
言ってしまってからハッとした｡
秘密を明かしてどうする!と｡
実はこのリング､人の形で具現化することができる｡意思を持っているくらいだから今さらかもしれないが､具現化することによってこっそりと主人を守っているのだ｡
ただしこのことは誰にも明かしてはならない｡たとえ相手が主人でも｡まあ人間には見えないのだから､リングが口を滑らせない限りバレることはありえないのだけれど｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
