アリス、目撃する 01 ページ12
Aは相変わらず､トレーニングルームを1人占拠し修行していた｡占拠といってもわざとではない｡ほとんどの構成員が業務中でトレーニングしている暇がないから必然的にそうなっているだけだ｡
動きをパッと止めると､Aはダラリと武器を持つ腕を垂らし天を仰いだ｡
｢……休憩しよ｣
パタパタと部屋の隅の方へ歩みを進め､ぺたりとその場に座りこむ｡
ぼーっと正面の方向を見つめながら､ゴクゴクと飲み物を体に流しこんでいく｡
｢お嬢｣
｢なあに､ジョーさん｣
視線を動かすことなくぼんやりと返事を返したA｡心配そうな声が彼女の耳に届いた｡
｢大丈夫か?｣
｢何が?｣
｢なんだかぼんやりとしているから｡疲れているのではないか?｣
｢うーん､そんなことないんだけど｣
残りの水分を飲み干してから､Aは思いつくことを口にした｡
｢つまんない､からかも｣
｢つまらない?｣
うん､と小さく頷きAは物思いにふけた｡
バジルとの修行を終えて約2週間｡Aは暇を持て余していた｡
もちろんトレーニングは続けている｡ちょっと辞めただけであっという間に体は鈍っていってしまうと聞いたからだ｡まあそうでなくとも今まで築き上げた生活リズムをそう簡単に崩せるわけもないため､彼女が辞めたとは思えないが｡
｢だって……皆手加減してくれるんだもん｡稽古にならないよ｣
｢手加減､か……｣
リングはそれだけ言うと黙りこんでしまった｡
バジルとて､もう修行を手伝ってくれないわけではない｡頻度が週5から月1に減っただけのこと｡
ただ実戦練習を積まなければ､その1回の修行を無駄に過ごすことになってしまうかもしれない｡
そう考えたAは暇そうな構成員や非番の構成員に稽古と称して実戦練習に付き合ってもらっていた｡もちろん構成員たちはAの頼みならば喜んで!と意気揚々と協力してくれた｡
しかし……｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年2月15日 16時
