アリス、師を迎える 01 ページ6
午前10時27分｡ツナの仕事部屋｡
Aは落ち着かないといった具合に部屋中をうろうろと歩き回っていた｡何度も時計に視線を飛ばしては大して針が進んでないことを確認し、またぐるぐると歩き出す｡
｢A、落ち着きなって｣
｢だ、だって!｣
ツナが苦笑い混じりにそう諭す｡Aは一度立ち止まって、ツナの方を見た｡ワクワクしたような少し怯えているような、色んな感情が混在しているのが彼女の表情からよく分かる｡
今日はAを指導する人がやってくる日｡
彼女は朝、山本と共にツナの仕事部屋に来た時点でもうそわそわしていた｡
約束の時間は10時半｡いつも通り掃除をして、獄寺お手製のプリントを解き終わっても残った時間をもて余していた｡遊ぼうとしても集中できないようで、10時をすぎてからはさっきみたいにずっと部屋の中を歩き回って時間をつぶしていたのである｡
｢大丈夫だよ｡優しい人だから｣
｢うん、分かってる｡分かってるけど……緊張しちゃって｣
胸に手を当ててドキドキしていることを表現するA｡
緊張するのも、もっともな話だ｡初対面の相手にこれから自分の身を任せ、世話になるのだから｡
いつだって未知の世界に足を踏み入れるのは恐ろしいもの｡
Aなら大丈夫｡
そんなわけなかったのに、きっと平気だとツナは思いこんでいた｡
｢ツナさん、おててぎゅーして｣
Aはツナに駆け寄ると、両手を彼の方へ差し出した｡ぎゅーして、というのは手を握ってという意味だろうか｡
言われた通り手を握ってやると、Aも小さな手でしっかりと握り返した｡
｢ぎゅうー……｣
Aは目を閉じたまま、手を握り返し続ける｡しばらくすると、Aはニパッと満面の笑みを見せた｡
｢これでもう大丈夫!元気ちゃーじできたから!A、いっぱい頑張れちゃう!｣
ニコニコしながらAはそう言って、パッと手を離す｡
ツナは少し困惑した｡しかしAの突飛な行動と満足気な笑顔に癒されたのもまた事実｡元気ちゃーじができたのは、案外Aだけではないのかもしれない｡
ほんわかとした空気が2人の間を流れる中、控えめなノックの音が3つ部屋に響いた｡
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
futureblue�鏡�(プロフ) - ちささん» 初めまして｡コメントありがとうございます!ツナにはかなりお世話になっています,ツッコミにも親バカにも回ってくれるので｡素敵と言っていただけて嬉しい限りです｡できるだけ早いペースでの更新頑張ります!ちさ様もお身体にはお気をつけてくださいね｡ (2019年12月17日 19時) (
レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
futureblue�鏡�(プロフ) - まくすうぇるさん» 初めまして｡コメントありがとうございます!そうですね,大人びているところがあるとはいえまだ8歳児なのでそんたくできないお年頃です(笑)多分順位としたらツナ>>>ヒバード>骸ってところですかね｡ (2019年12月17日 19時) (レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。作中の綱吉と同じ気持ちで毎回読ませて頂いております← すごく素敵な作品でもう更新が楽しみで楽しみで仕方がないです！お体に気を付けて無理せず更新頑張ってください！ (2019年12月16日 23時) (レス) id: 6d1f2ce8ab (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - 主人公の関心 骸＜ヒバード ぷぷっ・・・www (2019年12月16日 19時) (レス) id: 34699431ad (このIDを非表示/違反報告)
futureblue�鏡�(プロフ) - 成田優吾さん» 初めまして｡コメントありがとうございます!何回も読んでいただけてるなんて嬉しさの極みです｡なかなか読者の方の声を聞くことができないので、面白いと言ってもらえて幸せです｡早いペースで更新できるよう頑張ります!成田優吾様もお身体にはお気をつけてくださいね｡ (2019年12月9日 18時) (レス) id: 495c86097b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年11月22日 16時
