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｢分かった、行ってきます｣
書類を受け取ると、Aはへたっぴな敬礼をして部屋を出ようとした｡
｢A｣
｢なあに、ツナさん｣
ツナに呼び止められ振り返るA｡
ツナは微妙な顔をしていた｡
｢本当によかったの?｣
｢何が?｣
｢その……ペンダント｣
Aは納得したように頷いた｡
男に壊されたペンダントには、ツナが言うには本当にSDカードが入っていたらしい｡
Aがボンゴレにやってきたあの日、ツナが言っていた気になることとはそのSDカードのことだったのだ｡当初ツナがAを保護しようと思った要因の1つだと言っても過言ではない｡
会議を通して内密にタリアテッレファミリーへデータを送ることは決まっていたのだ｡あの男はタリアテッレで監察対象になる予定だった｡
しかしデータの引き渡し前日、Aはさらわれた｡そして目的物の入っていないペンダントは破壊された｡
ツナは同じペンダントを買おうかとAに提案した｡だがAは首を横に振ったのだ｡
｢A、あれ大事にしてただろ?遠慮しなくても……｣
｢A、遠慮してないよ｣
｢でも｣
｢ツナさん｣
Aが書類を持ったまま、ツナの前まで戻る｡強い光が瞳にこめられていて、ツナは思わず黙ってしまった｡
｢あのね、Aがあのペンダントを大事にしてたのはママとパパがくれたからだよ｡同じペンダントでも違うの｡だからもういらない｣
ツナは何も言えなかった｡Aの言うとおりだったからだ｡
あれがおもちゃであることなど、賢いAが分からないはずがない｡
｢それに今は雲雀さんがくれたバンクルもあるし……Aね、大好きなツナさんたちといられるだけで幸せなの!だからペンダントはもういいや｣
満面の笑みでAは自分の気持ちをまっすぐに伝えた｡
じゃあ行ってきまーす!と今度こそAは出ていった｡
ツナは顔を覆っていた｡入るタイミングが掴めず廊下で待機していた獄寺が入れ替わるように入ってくる｡
｢獄寺くん、今の聞いてた?｣
｢はい｣
ツナがそっと手をどかす｡ツナはAの言葉に心を奪われてしまったのである｡胸キュンしちゃったのだ｡ああ、決して恋愛対象としてではないのでご安心を｡
｢……Aが可愛い｣
ツナは気づいていなかった｡この瞬間、Aに対して母性ならぬ父性が芽生えたことを｡
そして今後もアリスに振り回され続けることも｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
