アリス、帰る 01 ページ42
A誘拐事件から1週間が経過した｡今日も平和である｡
｢お疲れ様です、ツナさん｣
そう言うと、Aはコトンと淹れてきたお茶を机に置いた｡彼女の頬にはばんそうこうが貼られている｡
大きなけがはなかったものの、イスを蹴り倒された時にところどころ擦ってしまったのだ｡痛がるAに動じることなく医務係が無情にも消毒液を塗っていった｡
｢ああ、ありがとう｣
ツナが笑いかけると、Aも嬉しそうに微笑んだ｡
ツナが目を向けていたのはタリアテッレファミリーからの文書である｡今後のことについて記されているようだ｡
例の男は一時的にボンゴレが身柄を拘束していたが、タリアテッレが引き取りにきた｡その際にタリアテッレのボスも共にやってきて、ツナたちに顔を出した｡
彼は本当に申し訳なさそうにしていた｡ボンゴレに迷惑をかけたことだけでなく、軽傷とはいえAを傷つけてしまったことも謝罪した｡あの男はタリアテッレで話し合い処分を下すそうだ｡
｢ツナさん、何か手伝おっか?｣
Aがお盆を胸に引き寄せ尋ねた｡彼女の腕には雲雀からもらったバンクルが光っている｡このバンクルのおかげで自分の命が続いていることを彼女は知らない｡
雲雀は守護者会議に出席していなかったが、薄々何かを勘づいていたらしい｡
AにGPS入りのアクセサリーを授け、必ず身につけておくように言っていた｡すぐにAの居場所を特定し駆けつけることができたのは、雲雀が異変に気づくなり知らせてくれたおかげなのである｡実際に知らせたのはイマイチ訳が分かっていない草壁だったが｡
ツナはAにそのことを内緒にしていた｡万が一の時に備え、事実を隠すことにしたのだ｡A自身、バンクルを気に入っていたため外すはずなかったのだが念のため｡
｢うーん、じゃあこれ渡してきてくれる?｣
ツナが渡した書類は守護者以外の構成員に宛てられたもの｡
誘拐事件の後、ツナはAを保護しているという事実を公表した｡
そもそもこのことを隠したのは外部に情報が漏洩し、Aに危害が及ぶことを恐れての判断だった｡事件が起こってしまった以上、隠している必要はもうない｡
最初こそ戸惑いを隠せない構成員たちだったが、さすがと言うべきかすぐに彼女を受け入れた｡Aが書類を届けても誰も動じない｡
一部構成員の中にはAにメロメロの者もいるようで、会うたびにお菓子をもらうこともあるそうだ｡最近は平和だとはいえ、やはり癒しがほしくなることも多少はあるのだろう｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
