アリス、見抜く 01 ページ27
｢A｣
後ろから自分を呼ぶ声が聞こえ振り向くと、そこには雲雀が立っていた｡
｢雲雀さん!こんにちは｣
Aは雲雀に駆け寄ろうとして数歩踏み出した｡だがそれ以上雲雀に近づこうとはしなかった｡何かがおかしいと思ったからだ｡
Aはさっと雲雀を観察し、あることに気づいて雲雀に尋ねる｡
｢ヒバードは?｣
彼がよく連れているヒバードが見当たらないのである｡
｢今日はいないよ｣
そう言われれば納得できそうだったたが、Aは素直に頷けなかった｡違和感が拭いきれない｡
｢……本当に雲雀さん?｣
雲雀は驚いたように眉を上げた｡
見た目は雲雀そのもの｡でも何かが違う｡自信はないが、Aはそう感じた｡
どうやって雲雀に成り済ましているか｡Aは初めから考えていない｡
｢どうして?｣
そう言われてもはっきりとした答えはない｡ともかくAは気づいたことを言っていくことにした｡
｢ヒバードがいないから｣
｢だからさっき｣
｢分かってる｡連れてこない日もあるって｡でも他にも気づいたことがあるよ｣
Aは雲雀の言葉を遮った｡彼に話させてはならないと思った｡
雲雀が口を開いたら、きっと自分の考えは簡単につぶされてしまう、と｡
｢雲雀さんからAに話しかけてくることはあんまりないよね｡大体Aから挨拶するもん｡あとね｣
Aは雲雀の目を見て言った｡
｢雲雀さんはAのことをAって呼ばないよ｣
｢……クフフ｣
そんな声と共に、サアッと雲雀の姿は消えてしまった｡
代わりにそこにいたのは骸だった｡
｢……六道さん｡Aに何か用?｣
｢おや、驚かないんですか?｣
骸は笑みを浮かべてAを見下ろしている｡
Aは骸に少し苦手意識を抱いていた｡まあ、初対面が衝撃的だったのでしかたない｡
｢ちょっとだけびっくりした｣
｢そうは見えませんよ｣
｢雲雀さんじゃないって分かってたから｡なんとなくだけど｣
骸が眉を上げる｡さっきと同じだ、とAはひそかな発見をしていた｡
｢なんとなく、ですか｣
｢うん｡それで六道さん、何か用?｣
Aは骸をせかす｡Aにこれといった用事があるわけではなかったが、早くこの場から離れたかった｡
｢ではこれを沢田綱吉に渡しておいてください｡頼みましたよ｣
骸はAに持っていた書類を渡すと、身を翻して行ってしまう｡Aは骸に声をかけようとしたが、聞いてくれない気がしてやめた｡
｢直接渡さなくていいのかな……｣
Aはツナの仕事部屋に向かいながら呟く｡このあとちゃんと書類は届けた｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
