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獄寺の部屋に着き、Aはうろついていた｡
｢何してんだ｣
｢荷物、どこなら置いていい?｣
ああ、と納得した獄寺がソファーに座るよう促す｡
Aは背負った小さめのリュックを前に抱えてそっと腰かけた｡
リュックの中にはボンゴレが用意してくれた服や風呂道具がぎゅっと詰まっている｡ツナが担当だった時にAに持たせてくれたのだ｡このリュックさえあれば、誰が担当の際でも1週間は過ごせるようにしてある｡
Aは少し視線をさまよわせた後、獄寺に尋ねた｡
｢何かやること、ある?｣
は?
と口には出さなかったが、獄寺は思ってしまった｡
｢A、ちょっとだけならお手伝いできるよ｡お洗濯とかお掃除とか、あと……｣
｢待て待て｣
獄寺は思わず待ったをかけた｡
Aが不思議そうに獄寺を見る｡
｢10代目や山本のところで、そういうことしてたのか?｣
Aは首を横に振る｡
｢じゃあ、何で｣
｢捨てられちゃうから｣
｢は?｣
二度目は抑えきれなかった｡
Aはそんなことは気にしていなかった｡
｢A、いい子にしてなきゃ｡また捨てられちゃうから｡言うこと聞く子はいい子｡お手伝いできる子はいい子｡いい子だとママが喜ぶ｡だからママといる時A、頑張った｡でもだめ｡悪い子だったから捨てられちゃった｡今度はそうならないように、前よりもっと……獄寺さん｣
Aは獄寺を見つめた｡
｢A、いい子?｣
獄寺はゴクリと唾を飲んだ｡
Aは一体どんな環境で過ごしてきたのだろうか｡
彼女は色んなことを背負いこんで、全部自分のせいだと思いこんでいる｡そうせざるをえなかったのか｡
そう思わなければ、あまりの理不尽に押し潰されてどうしようもなかったのか｡
獄寺はため息を1つこぼして、Aの頭に手を乗せた｡
｢俺はお前が言う基準でいい子か悪い子か言ってやることはできない｡大体そんな理由で手伝いするんだったらもうやめろ｣
｢でも｣
｢いい子って認めてほしいからじゃなくて、お前が本当にやりたいって思ったなら話は別だけどな｡……いいか、A｣
Aは獄寺を見上げようとした｡彼が初めてAと呼んだから｡
しかし獄寺の手が邪魔でそれはできなかった｡
｢ここには悪い子だから捨てるなんて考えの奴はいない｡少なくとも10代目は絶対そんなこと思っちゃいねえ｡そこんところ、よく覚えとけ｣
そう言って獄寺は頭から手をどかした｡
Aはその手があった場所にそっと自分の手を乗せてみた｡まだ温かさが残っている気がして、Aはなんだかほっとした｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
