アリス、目を覚ます 01 ページ35
｢ん……え?｣
Aが目を覚ました｡寝ぼけまなこをこすろうとしたが、腕が動かない｡
Aはすぐさま何かがまずいと感じ、一気に覚醒した｡取りあえずAは自分の置かれている状況を確認することにした｡
イスに縛りつけられ、まったく腕は動かせない｡足は拘束されていないが、地面に足がつかないので逃げることはできない｡口が塞がれていないのがまだ救いであった｡
次に周りを首の動く範囲で見渡した｡
今のところ人影は見当たらない｡そのことにAはひとまず安心した｡
だが今Aがいる場所は窓がなく、あまり明るいとは言えない｡さらに言うと、彼女の視界の内にドアもなかった｡
どうしよう、取りあえず大きな声でも上げてみる?
Aはそう考えて、大声を出すために深く息を吸う｡
しかしドアノブが回る音が聞こえ驚いたせいで、Aは咳き込むこととなった｡
Aは咳き込む中で、ドアノブを回した人物が室内に入ってくる気配を感じた｡
なんだ、後ろにドアがあったのか｡
そう思えるだけ彼女にはまだ余裕があるのかもしれない｡
足音が聞こえる｡ドアからどれくらいの距離があるかは分からないが、ゆっくりとAに近づいているようだ｡
Aはゴクリと唾を飲みこんだ｡
｢起きたのか｣
低い声｡相手が男性であることが判明した｡
Aは答えなかった｡答えずとも起きていることが相手に知られていることは分かっていたからだ｡
返事の代わりにAは首をひねれるだけひねり、背後にいる男を見る｡
……え、誰?本当の本当に知らない人なんだけど｡
男はAの周りを一度ぐるりと回ると正面に立った｡
｢訳が分かんねえって顔してんなあ｣
男がニヤニヤと笑っている｡Aは彼を見上げたまま黙りこんだ｡
｢でも怖がってるってわけじゃねえみたいだな｡なかなか度胸がある……テメエ、名前は?｣
Aがだんまりを決めこんでいると、腹が立ったのか男は彼女の右肩に力強く手を乗せ叫んだ｡
｢名前を言えっ!｣
｢……アリス｣
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2019年5月27日 19時
