3話続き ページ4
「A、お前の番だぞ」
教師の声にハッと我に返った。いつのまにか順番が回ってきたらしく、クラスメートたちが私のことを見ていた。
「ご、めんなさい」
「緊張すんなー」
慌てて立ち上がって自己紹介をするも声が震えて、お調子者っぽい男子が声をかけてくる。
(うっさい、誰がお前らなんぞに緊張するか)
声も体も震えて、周りからは新しいクラスに緊張している生徒にでも見えるんだろう。カッコ悪い。
文次郎の顔を見るのが怖くて、私は自分の机を一点凝視して震える声で自己紹介を続ける。
もし万が一文次郎と目があって、もしその瞳に昔の私の姿が写っていなかったら、きっと私は、自分を保っていられなくなる。
だけど長年文次郎ばっかりを追ってきた私の瞳は、自己紹介を終え周りの拍手の中、勝手に文次郎の方を追っていて、
「よろしくお願いします」
元々大きい目を、さらに見開いた文次郎とガッツリ目があった。何その間抜け顔、とか驚いてる顔も15歳には見えないよ、とか関係ないことも浮かんだけど。その表情に、瞳に、確かに昔の私が映っていて。
引っ込んだはずの涙が一滴、静かに流れ落ちた。
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作者名:くろひー | 作成日時:2021年3月30日 0時