美しく舞う桜 (ページ16)

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わしの望んだ世ページ16

元和二年、四月十七日

駿府城

今際の際の家康が苦しんでいる

物吉貞宗が枕元に現れる

家康「…元忠・・・元忠ではないか？」

頷く物吉貞宗

にっかり青江が現れる

家康「…忠次まで…そうか…迎えに来てくれたのか…わしも…お前らのもとに行くのだな」

再び頷く物吉貞宗

石切丸、桜姫、蜻蛉切、大俱利伽羅、千子村正も現れる

家康「おお…皆来てくれたのか…すまんのう…わしだけ長生きして…待たせてしもうた」

家康は起き上がろうとする

物吉貞宗が家康を支える

家康「皆のおかげでな…泰平の世を築くことが出来たぞ」

家康がむせる

家康「わしはな…戦が大嫌いじゃった…どうしたら戦から逃れられるのかをいつも考えていた…臆病で情けない主ですまなかったのう」

首を振る物吉貞宗

家康「戦はすべてを奪う…あんなものはいらぬ…わしは…祖父を殺され…父も殺された…子どもの頃から…いつかは自分も殺されるものだと思っておった…そんなものは間違っておる…親の腕に抱かれ…子守唄を聴いて…安らかに眠る…子供にとっての幸せは…そんなことじゃ
わしは…そんな当たり前のことすら許されぬ世を呪った…この世から戦をなくしてやりたい…そう思った」

家康はふらつきながら立ち上がり

家康「見てみい…この泰平の世を…この世から戦をなくしてやったわ！どうじゃ！参ったか！
これがわしの望んだ世じゃ！」

高笑いする家康

むせ返り、倒れる

物吉貞宗と桜姫が家康を支える

家康「…これで…よかったのかのう…ここまで来るのに…血が流れすぎた…本当にこれでよかったのじゃろうか」

家康は虚空を見つめる

家康「…信康」

家康はべそをかき始める

家康「すまんのう…すまんのう信康…かわいそうなことをしたのう…信康…すまんのう信康…すまんのう」

家康は涙を流す

家康「…情けないのう」