美しく舞う桜 (ページ48)

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剣術を教えてくださいページ48

そんな時、大倶利伽羅が急ぎ足でやってくる

後ろには吾兵がいた。

吾兵「榊原様！」

吾兵を無視していこうとする大倶利伽羅

吾兵「お願いします！榊原様！」

伽羅「…お前いい加減に」

吾兵は頭を下げ

吾兵「おらあに、剣術を教えてくだせえ！」

伽羅「…何度言ったら分かる」

吾兵「お願いします！榊原様！」

伽羅「断る」

ガックリ項垂れる吾兵

物吉「吾兵さん、どうして剣術を習いたいんです？」

吾兵「おらあ…強くなりてぇんです」

蜻蛉切「どうして強くなりたいのだ？」

吾兵「おらあは元々百姓の出です。戦に巻き込まれて親あ殺されて…
妹と二人で逃げたんすけど…食う物もなくて…妹のミツは…」

俯く吾兵

吾兵「…だから…だから…おらあ強くなりてえんです！お願いします！榊原様！」

土下座して頼み込む吾兵

伽羅「…」

信康「康政、わしからも頼む」

伽羅「…」

信康「…頼む！康政！」

暫く考えた後、膝をつく大倶利伽羅

伽羅「わかりました」

安堵の空気が流れる

吾兵「あ、ありがとうございます！」

地面に額を擦り付けて感謝する吾兵

伽羅「慣れ合うつもりはないが、手を抜くつもりもないからな。」

吾兵「はい」

伽羅「…来い」

大俱利伽羅がいなくなる

信康「吾兵とやら…お主…この手は…」

吾兵は信康に手を掴まれ、離すことができない

吾兵「え？あ、ああ、お恥ずかしい。子どもの頃から畑仕事ばかりしてきましたんで…」

信康は吾兵の手をまじまじと見つめて

信康「…ごつごつとしているの」

石切丸「吾兵さん」

石切丸に声をかけられ、顔を上げると、大倶利伽羅が目の前にいた。

吾兵「うわっつ！榊原様！申し訳ございませぬ！」

再び大倶利伽羅が去っていく

吾兵「あっ！榊原様！お待ちくだされ！」

吾兵が走り去った後

信康「ごつごつとしていた…ああいう手になるのか…それにひきかえわしの手は…柔らかいの」

蜻蛉切は信康の手を握り去ろうとする。

信康「お！忠勝の手は…大きいのう！」

物吉貞宗と蜻蛉切はその言葉に微笑みながら去っていった。

石切丸は信康を目で追っている

にっかり「心の優しい子に育ったね」

石切丸「ん？ああ、そうだね」

にっかり「ねえ、石切丸さん」

石切丸「さてと、私も行かないと」

石切丸がいなくなる

にっかり「…」

にっかり青江は石切丸のことを気にしつつ、いなくなった。