異世界日常生活 (ページ11)

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楠木さんは、ほぼ毎日会いに来てくれている

引取成立を急ぐでもなくただ日常的な会話をして面会を終えて帰っていく

そんな毎日を楽しいと思い始めると共に楠木さんが帰った後夢から覚めるみたいにネガティブな考えに支配される

きっと凄く気を遣われている

どうしてこの施設に来たのかまだ教えてもらっていない

わたしは都合がいいから、この人に心を開いたふりをして利用しようとしているだけ

一緒にいる時間が長くなればすぐにボロがでて嫌われる

生きていく気力がないのは、変わっていない

(こんなわたしを引き取らせる訳にはいかない)

そして、ベッドに引きこもるのがここ最近の習慣になった

土屋先生もはーちゃんも心配してるってわかってる

あの二人にはこれでも感謝しているんだ

信頼しきれなくても、敬愛心はある

一人で廊下を適当に歩いていたら、同い年くらいの少女が向こうから歩いてきて軽く話しかけてきた

｢こんにちは、暇なら話そう｣

｢彼女達｣とは、ほとんど話したことはなくて_話しかけずらいオーラが出ていたんだと思う_一人一人を覚える気もなかったから、会ったことがあるのか思い出すことが出来ない

たまにはいいかもしれないと気分転換に話すことにする

｢いいよ、そこにあるベンチに座ろっか｣

廊下を少し歩けば開けた場所があり、ベンチがある

二人で腰掛け、とりとめない会話をする

歳や食べ物で何が好きとか曲の好みとか

今まで頑なに拒んでいたけど、案外楽しくて意地はってたんだなと気付かされる

あのさっ…と少女梓が調子を変えて相談するように声を絞り出す

｢どうしたの？｣

言ってみてと促す

｢うん、私面会を２日置きくらいで受けてるんだけどね、この人いいなって思う人がいて｣

梓が悩んでいることが少しだけわかる気がした

多分わたしと同じようなこと

｢その人に迷惑かけるんじゃないかって怖いんだ｣

｢こんなに無償の愛情を異性にかけられるってなくて、私は何も返せないのに｣

そうだよね怖いよね

わたしは、梓の為に考える

｢でも、きっと前に進まなきゃダメなんだと思う｣