血の通わない人形 (ページ32)

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辰哉side

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医者「しばらくは意識が朦朧としていますが、時期にはっきりとしてくるかな。もう大丈夫だと思いますよ。」

二人でほっとする。

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あれから医者がたくさん来て、せわしなく動く。

俺たちは一旦外に出て待つように言われた。

外の窓から、中の様子を見つめる。

亮平が何の処置をしているか一個一個、説明してくれるが、まったくと言っていいほど、耳に入らなかった。

しばらくすると、

医者の「どうぞ。」という声が聞こえて、一目散に中に入る。

管が外れて顔まわりだいぶがすっきりしたラウールがいた。

顔の腫れはまだあるけれど、

何となく昔の面影があるその顔に、

思わず、涙があふれる。

亮平はとりあえず、医者と話をして、家に連絡するといって、一旦外へ。

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辰也「ラウ？良かった。ラウ・・・。」

涙が止まらない。

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ラウールはというと、
ぼーっと宙を見上げる。

何を見ているわけでもなく、

ただ、ぼんやりとしていた。

目線は合わない。

辰哉「ラウ？辰にいだよ。わかる？」

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何も言わない。

意識がまだはっきりしていないからかな？

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何となくラウールの反応に違和感を覚える。

焦点が合わない。

眼の光がない。

まるでその姿は、

人形のようだった。

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寂しい気もするが、目が覚めただけで、それだけで正直十分。

その後・・・

トロンとした目を再び閉じてしまった。

あっという間の出来事だったけど。

とにかく良かった・・・。

ラウールの手を布団の中にしまい、

「明日も来るからね。」とつぶやいた。

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