アネモネ (ページ45)

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拓弥side

下駄箱でA先輩を待つ。
職員室に鍵を戻すだけにしては遅い。
待っているのなんて気持ち悪いだろうか。やっぱり帰ろう。

『あれ、草川君。どうしたの？』

タイミング良く出てきたA先輩。
狙っているのかと思ってしまうほど。

「先輩の事、待っていたんです。」

『そうなの。ごめんね、待たせたよね。太陽君と話してたの。』

太陽君？
なんで太陽が名前呼びになっているの。

「拓弥って呼んで下さい。」

思わず声が小さくなる。

『え？』

「俺の事も拓弥って、名前で呼んで下さい！」

さっきの倍くらいの声で言うと周りに響いた。
今絶対耳まで赤い。
A先輩は笑って、拓弥君、と呼んでくれた。
それだけで胸が高鳴る。

「一緒に帰りませんか？」

『待っていてくれたんでしょう？』

先輩はそう言ってまた笑った。