アイロニーと意趣返し ページ10
スイカはそのまま、跳ねて行ってしまった。
このままスイカの帰りを待つかと思われたが、待っていても仕方がない、と部長は言うので、私以外の人は皆村の方へ向かうことしにた。
もちろん、私はお留守番だ。
悔しい。毎回思ってはいるが、なぜよりによって私だけが………。
「むう……」
だから、部長に皮肉ってやることにした。
「……頑張ってね。部長も、戦力になるといいね」
「…………あ?」部長は私の目をじとりと見て、すぐに反らした。「…るせぇな」
「ゑっ」
皮肉は失敗した。ナチュラルに言われてしまった。
グッドラック、という意味を込めてにこやかに親指も立てたが(もちろん、上に)、部長には伝わらなかったか。
もっとからかわれて「むむむ」ってなるのを見たかったなぁ。部長がそんな顔になるわけないけど。
「!」
そう思ったら、ぽん、と、私よりも少し大きな掌が、頭に乗っかった。
「………!」
あの暖かさが、手の位置一点に集まる。
「……??部長は私の頭が好きだね…」もしやこれが、部長の意趣返しか? そう考えると納得だった。
「行けるぞ千空」
「今こそ”頭だけじゃねえ”とそっけなく言うのだ」
クロムコハクは小さく私の方に向かって声を投げかけてきた。
「?何だって?」
毎度私と部長が話していると、この二人は何かを喋るのだが、よく聞こえない。
まあクロムの代わりにコハクがガッツポーズをして、
「問題ない!私達のことは気にしなくていいぞ!」
と笑って張り上げたので、気にしないことにした。
「部長?」
「……っ、何でもねぇ」
頭から重さがなくなって、手が離れた。
……何なんだ……。
部長達がラボから出ていった後、私は自分の頭に触れた。
部長に頭を撫でられると、なんだか暖かくなる。
火の近くにいる時の暖かさではなくて、何だかこう………もっと違うものだ。
何でだろう。
うーん…………。
「考えてもどうにもならない、か」
散歩でもしようかな。ふいに思い立ったので、そうすることにした。
私は外に出た。
そうして向かったのは、あの場所だった。
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (4月24日 22時) (レス) @page27 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年12月26日 8時