銀狼のやらかし ページ9
「クククご名答だ。んでコイツらは嘆きに嘆いてるっつうわけだ」
部長の運の悪さは、きっと皆が知っているはずだ。私も待つあいだ、悪い予感はしていたのは、言うまでもなくだった。
「部長が神頼み、って言うのがまずあり得ないんだよ」ため息をつくと、コハクがはは、と手を振る。
「A、言ってることが結構悲惨だぞ」
「事実とは恐ろしいね」運、というものに実体はないが、事実だから仕方がない。「というかそれにしては、部長は嘆かないんだね」
「あ゛あ嘆いてもしょうがねぇ。それに、他力本願は科学使いの考え方じゃねぇからな」
部長はそう言うと、脇に置いてあった瓶を掴み、私達の前に出した。
「科学使いなら科学使いのやり方で行く。王国特製、科学のパワーアップドリンクだ!」
「おおー」
机上に置かれたそれを、手に取る。中は少しとろみがあって、琥珀色の液体だ。
「ドーピング的なやつかな?にしては美味しそうだけど」
「いやA、私には微塵も美味しそうには見えないぞ」
「何が入ってんだこれ」
「原材料は茶ノ木、ハチミツ、石菖だ。……A、分かるな?」
「何が?」
「作用だよ」部長が呆れた顔で返した。なるほど、作用の話をしろってことか。
「まず、茶のカフェインで集中力を上げるでしょ?」
指を折りながら口にした。うっかり夜に飲んだらもう眠れないお茶やコーヒーは、カフェインたっぷりだ。
「はちみつは……何だろ、糖分で脳がリラックスするとかかな。
で、石菖は意識をはっきりさせる効能がある」
「さすがA先生、100億点だ」部長はご満悦の様子だ。「これさえ飲んじまえば…………」
「てっ!!」
と、背後でくぐもるような鈍い音がした。
「全部飲む奴があるか!」
金狼が拳を握り締めている。銀狼の頭は、三段たんこぶが赤くなっていた。
「ええ!?もうないの!?」
「な、まさか銀狼全部飲んだ?」
「材料まで生で食ってやがる」
「しょうがないじゃん!金狼がもしマグマに負けちゃったら、僕がマグマに勝たなきゃなんだからあ!」
銀狼は茶の葉をむしゃむしゃと噛みながら声を上げた。
「あーあ、石菖とか空じゃねえかよ」部長は空になったツボを見つめていた。
クロムが何かを促すように呟く。
「石菖………って、川のそこら中に生えてる草か」
その呟きに答えるように、スイカが手を上げた。
「ス、スイカが摘んでくるんだよ!」
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (4月24日 22時) (レス) @page27 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年12月26日 8時