橋の上で(私) ページ20
「クロム、よかったよ」
私はクロムに称賛を投げた。クロムは腫れた目を気にしながらも叫んだ。
「おうよ、俺だけの力じゃねーぞ!全員で勝った!」
「……だね」
クロムのその、はっきりとした瞳の奥が見えたからだろうか。
ふと、部長が死んだ日のことを思い出した。
━━これは俺と、杠と、万里と!そして千空の、力を合わせた闘いだ!
そう、あの時大樹が言った言葉が、鮮明に蘇る。
あの時は杠に、大樹に、部長に、私の、四人の闘いだった。
今は、もう違う。
これから、仲間は増える。
今、新しい仲間とともに、クロムの勝利を喜んでいる。
━━━力を合わせた闘いだ!
………………。
「……おめでとう、クロム」
私は皆が囃している脇で、小さく手を叩いた。
*******
「んじゃAちゃん、俺達は出よっか」
「ん、うん」
ゲンに促され、そのまま出口へと脚を運ぶ。
「部長、頑張ってね」
私が部長に向かって手を振ると、部長は突然、はっと何かに気がついた顔をした。
「?」私は部長の顔色を伺った。「なんか顔が赤くなってるけど……恥ずかしいことでもあった?」
「んな訳あるか!」まだ赤いまま、部長は私の背中を押した。「テメーはさっさと出やがれ!」
コハクが何故か私の方を見てにやにやしている。何故だ。
「んん?分かった」
押されながらも、私はゲンとともに端を渡った。
ゲンは横を歩きながら、湖の向こうの山々を見つめている。
水面は光に反射して、きらきらとこちらに笑いかけているようだ。
橋の真ん中くらいまでさしかかった時、ふいにゲンが口を開いた。
「じゃ、Aちゃん。たくさん話して貰おっか!」
「は、何を?」私はゲンを見上げた。
「え、相談するよって言ったじゃない?」
相談する?
ああ、御前試合の前にゲンが言っていたやつか。
「そんなことは一言だって言った覚えはないね」
断言できる。”私は”言ってない。ゲンは「Aちゃんって、何か俺に冷たくない?」と、小さくこぼしていた。
「相談ね……ゲンはしたい?」
逆に問い返すと、ゲンはにこりとして言った。
「そりゃあね。こんなカワイイ子が悩んでるのに放っておけないでしょ?」
「あぁそうですか」
適当に相づちを打っておく。こいつ、なかなか気持ち悪いことを言うな。
でも、相談、か……。
杠以外にしたことがないな。
………なら一回、メンタリストを信じてみようかな。
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (4月24日 22時) (レス) @page27 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年12月26日 8時