万里の時を駆ける4[Dr.STONE] (ページ16)

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迷いなく突入ページ16

「ゲン」

私はゲンの名前を呼んだ。反論のためだ。

「君は根拠というものを知っている？部長は合理的なんだよ。必要なものしか覚えない」

というのは、半ば私の偏見だった。部長ならそうだろうな、という私の見方。

「…………」

「だから、昔の実験の事なんて覚えている訳ないよ」

「…………」

ゲンは何も答えない。

まったく、黙秘か。面白くないな。

そのうちに木々のざわめきもなくなって、森を抜けた。クロムの倉庫の姿があらわになる。

遠く━━━村の方から、歓声の声が小さくだが上がっているのが聞こえる。

「なんか……誰かぼこぼこにされてるね」

「聞こえるんだ？」ゲンが言った。そういうのは反応しやがるんだなと思った。「耳がゴイスーなのねぇ。司ちゃんのとこにもいたよ。そういう人」

「へえ…」

そこで会話は途切れた。

倉庫も過ぎ去り、カセキのおじいさんが造った、あの吊り橋に辿り着く。
いつもは番がいるこの橋も、しんと静まり返っていた。

…………入りづらい。

ゲンが何の迷いもなく橋に突入していくのを見て、再びいらっとした。
仕方なくついていく。よし、金狼に怒られたらゲンのせいにするか。

「あっちゃ～……これちょっとバイヤーなんじゃないの？クロムちゃん」

「？そんなにばいやーなの？」

私達が試合場に近づくにつれ、歓声が大きくなっていく。
しかし試合の様子が見えるところまで来たとき、歓声ではなく、ざわめきが呼ばれていた。

「クロム対マグマになってる。ということは……」

━━金狼VSマグマ、俺VSマントル、コハクVS千空、銀狼VSアルゴなんだよ！

クロムの対戦相手はマントルだった。

それが今マグマと戦っているということは、クロムがマントルに勝利し、逆に金狼はマグマに敗北したということだ。

そして今、クロムの状況は悲惨だ。片目が赤く腫れ、鼻をやられたのか、血が顔中に広がっている。

まあとりもなおさず。

「今科学王国は大ピンチということかな」

うんうん、と頷き、クロムを見る。彼が突き出した棒の先には、スイカのマスクがぶら下がっている。

部長らはまだ、私達に気づいていない。

「クロムの狙いは、スイカメガネのレンズでマグマの黒い服に着火…どう見てもそれだ」