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炎色反応は、綺麗だった ページ15

ゲンの言葉に、私は眉を寄せた。

「発電所?なぜ」

こちらには目も暮れず、黙々と歩くゲン。目を細めて言った。

「磁石を作ったとき、Aちゃん発電所で喜んでたじゃない?なんか不思議だったのよ」

「そんなに喜んでた?」と私。

「うん」とゲン。

そんなに?
うーん、全く覚えてないな。

でも、発電所か……。
私は木漏れ日の眩しさに、下を向いた。



「発電所……発電は、私にとって、二回目の科学だった。それだけ」

ぽつりと呟いた。

「んん?」ゲンの声色がさらに怪しくなった。「二回目ってそんなに重要??」

「重要」

「例えばどんなところが」

「例えば、っていうか……」私は頭を掻いた。何て言えばいいんだろう。


「子供の頃に部長とやった、二回目の実験だった、ってこと」


それを言うと、急にゲンはきょとんとした表情になった。

そして笑った。

「へえ〜。いい話だねえ」

……。なぜかよく分からないけど腹立つ。

「よくないよ」

空を仰ぎながら、そう返した。




「それに部長、私と実験したこと、覚えてないから」

「そうなの?」ゲンが不意を突かれたような顔をした。

「うん」

「本当に?」

「……どういうこと?」少し声が苛立ってしまった。

ゲンは相変わらずニコニコしている。何が言いたいんだ?

「部長と、その時は色んな発電をしたんだよ。火力発電も、その一つだった」

初めて部長に会った帰りに、母さんに家から締め出されたが、あと一回でもいいから行きたかった。
そう思って、その次の土曜日、タイミングを見て家からこっそり抜け出したのだ。

「ついでに、とか言って部長は、火力発電に使った炎で炎色反応を見せてくれた」

「うん」

「それが凄く、……綺麗だった」

ため息をつくように、そう吐いた。

「だけど、千空ちゃんは覚えてないって?」

「………ずいぶん前、クロムが炎色反応を見せたとき、『初めてやったのはいつなんだ?』って訊いてきた」

そう言うと、心の中で、何かが疼いた。

ああ。これは悲しみなんだな。そう理解した。



そうだ。実を言えば、悲しかったんだ。



「なるみは、どの色が一番気に入った?」

まだ私よりも背が小さかった部長の声。

声変わりする前の幼い部長は、今より話し方ももう少し幼かったんだよなぁ。



でも、部長は覚えてない。

だからもうこれは、無駄な記憶に過ぎない……

「でもさ、Aちゃん。千空ちゃんがそれを覚えてない、なんてこと、ないと思うよ?」

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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇‍♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (4月24日 22時) (レス) @page27 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長庚 | 作成日時:2023年12月26日 8時

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