誰の手? ページ14
「Aちゃん」
「………!」
私の手に、誰かの手が触れていた。
その手は強い力もないのに、振りかざした勢いを全て吸い込んでしまったようだ。
「だ、れ?」身体が凍りついたかのように、がちがちで動かなかった。
しかしさっきまで激しくうっていた鼓動は、次第に弱まっていく……。
「俺よ俺、あさぎりゲン」
自分を指差して、ゲンが笑った。
「なんか状況がズイマーそうだったけど、大丈夫?」
何も知らない割に、なんだか明るい口調だった。
ゆっくりと、石器を下ろした。
いや、下ろしたというよりかは、落とした、に近い。
「Aちゃん!?」
全身の力が抜けた。
気づいたらゲンの顔が遠くにあって、その不安げな表情が揺らめいている。
「ごめん、安心して力が、」
入らない。
笑おうとしたけれど、どうにも目元がひきつってしまう。
すると、ゲンが私に向かって手を差し出してきた。
「よく分かんないけど……話なら聞くよ?これでもお悩み相談は得意なのよ」
ゲンに手を重ねると、ぐいと引っ張ってくれた。
立ち上がり、砂を払う。
あの声は、もう聞こえなかった。
あれは、一体何だったんだ?
頭の中では、その声━━”私”の声が何度も再生されている。身体中が粟立った。
戦慄は終わったかと思っていたが、首もとを掴むと、未だどくんどくんと拍が波うっている。
「あ、でも相談は後ね。今は行きたいところがあるのよ」
「行きたい……ところ?」
「そう」ゲンが頷く。「あ、でも大丈夫?今の状態でもついてこれる?」
「…………行く」
誰かと一緒でないと、気がどうにかなりそうだ。
「って言っても……俺が行くのは村だけどね」
「は、村には入れないけど」
だから私は今こんな目にあっているんだぞ、と念を込めて睨んだが、ゲンは気づかなかった。
「部長は御前試合に参加してるから入れるだけ」
「あ、そうなのね?まぁ行くけど」御前試合、というワードだけで内容が分かったのか、ゲンは前を歩き出した。
「話を聞いちゃいないのか」
「まあね〜。一瞬様子を見るだけだから」ゲンは続けた。
「それより俺、Aちゃんの事を知りたいかな」
へ?私は首を傾げた。気がついて、ゲンのあとを追う。
「何の事を知りたいって?」
「ん〜、たくさんあるけど……」ゲンは袖を昔の中国人にして言った。
「発電所について聞きたいかな」
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Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️とても、続きが気になるのでよろしくお願いします。m(_ _)m (4月24日 22時) (レス) @page27 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年12月26日 8時