万里の時を駆ける4[Dr.STONE] (ページ2)

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理科室にて。ページ2

万里3「入部の出会い」の続き

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つうんと、機械音が私の耳をすり抜けた。

「ドローンだ……」

男子生徒”B”の声が上擦る。

”テメーももしかして、科学部に入りてぇのか？”

低い声の男子生徒”A”にそう言われて入ったのが、この理科室だ。

最後の望みのような気持ちで、私は二人についていった。

この部屋に、”実験の音”はなかった。

代わりに、カチカチとボタンを押している様子、そこから発せられるBGM、ドローンのコントローラーとおぼしき物を操作する音が取れる。

「良い腕じゃねえか。盗撮でもしてんのか？」

「花見だ。上から見る桜ってのも乙なもんだぜ。

まぁ、そのついでに地べたに映りゆくよしなし事(・・・・・)ってヤツを見ちまうこともあるかもな」

「ククク……いい趣味してんじゃねえか」

「き、君は……撮られなかった？」

生徒Bが、恐らく私に訊いてきた。確かに女子なので心配しているようだ。

「レギンスは着用していますので」

「よかった……」

ほっと、生徒Bは息をついた。生徒Aの方は相変わらず部員と話を続けている。

「残念ながらお前らは、うちの入部要件を満たしてねえ。ダメだ」

「入部要件？」

初めて部員に質問をした。男は他の部員を促すと、勢いよく返事が聞こえてきた。

「お前ら、申告しろ」

「はい、小園(おぞの)部長！オレ46！」

「44！」「40！」「48だっけ」矢継ぎ早に耳に数字が飛び込んできた。

「45。志望校は58」「俺なんて40だぜ」「35」「すげー……お前また下がってんじゃん！」

「あ……あ……」

生徒Bが数字の何に気づいたのやら、愕然としていた。

「偏差値50未満。それが入部の絶対条件だ。優等生ども」

部員改め小園部長は、唾が飛ぶ声の大きさで言った。

「そんな入部要件だから、落ちこぼれがこんなにいるのか……」

私の呟きも、しっかり聞こえていたようだ。小園部長は声色を変えずに言う。

「何とでも言え。俺らはもうどうしようもない落ちこぼれの集まりだ。

お前らが入部したところで、俺たちがお前らについていくなんて能力的にあり得ねえ話なんだよ」

言葉に詰まった。

強気で言っているのだろうが、もしかしたらひたすら悩んだ末の科学部設立だったのかもしれない。

言い返す事ができない。横にいるBも同じだった。

「それでもいい」

生徒Aの声が、部員達を制した。

「俺たちを、科学部に入れろ」

生徒A……後の石神千空は、ひとり目を細めて笑った。