ポケモン本部【あの空の先で】 (ページ26)

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「昨日は南の森のお尋ね者の依頼を受注、そこでそのお尋ね者と接触するも捕まえることはせず。それはそいつが本部の内情に詳しかった故に情報と引き換えに逃がした。手ぶらで帰るわけには行かずビッパというポケモンに罪を擦り付け無理に逮捕。そのお尋ね者が話した本部の内情は、新人が来たこと。この新人には家族がいた事。ああ、そのお尋ね者は北の出身だったみたいだね。そして──」
「は、待てよ。お前こそ何デタラメをペラペラ並べてんの？」
「デタラメ？ ──なら確かめてくるといい、既に君が逃がしたポケモンは捕獲された」

　そこまで語ったあと、ハイドはハッと我に返る。ハッと言うよりは「あっ」って感じか。こほん、と咳払いをひとつすると「まだ暴露されたいか？」と性格の悪そうな笑みを見せた。

「観察と情報収集はこの仕事の基本だ、イキるなよ雑魚が。──お前くらいなら1割の真実さえあれば残りの9割も簡単に暴き出せるぜ」

　辺りはしんとしていた。
　そこに空気を読まないポケモンが飛び込んでくると、また周りは風が入り込んできたかのように動き出した。
　入ってきたポケモンは、オレンジの身体に人型。入ってきた瞬間ぐねぐねと形を変えた不思議なポケモン。

「どこでもひとっ飛び！ヘルメスですヨォ～！ ……ってあれ」

　ムラサメが言っていたポケモン、のようだ。
空気が読めるのか読めないのか。いやむしろいいタイミングだったのか。
　ヘルメスは周りを見渡すと、手をパチンと叩いてにっこり笑った。「ミナサン、お仕事しましょうネ」と。

「ちっ」マニューラはばつが悪そうにヘルメスを押し退け扉から出ていく。これはまだ何かありそうな雰囲気だが、止めるにもあの話が本当か今は判断ができない。
　ムラサメは「気のたったポケモンが多くてごめんな」とライに言う。「嫌じゃなかったか」とライを見た。自分があんなに怒ったこともあるだろうが、きっとお兄さんの話題が出たことにだろう。

　ライは「大丈夫」と言った後に「ありがとう。あんなに、自分のことみたいに、本気で怒ってくれて」と笑った。
　それをじっと眺めたあと、ハイドはまた静かになる。今の会話から内容を理解している……のかもしれない。ハイドはライに「次は」と声を掛けた。