ポケモン本部【あの空の先で】 (ページ3)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:2,159 hit

◇ ページ3

長い廊下をてくてくと宛もなく歩いた後、少し止まった。その時見計らったかのようにライの背中へと声をかけるポケモンがいた。

「ねえ君。君はどこのポケモンだい？」
　声のする方にライが振り返ってみると、そこには長い足がある。思わず慌てて上を見上げると、それはすらっと高い身長のあるポケモンだったと認識できた。水色の体に優雅な佇まい──エージェントみたいなポケモンだ。

「あ、えっと僕……！！」少し言葉がまごついたが、ライはビシッと姿勢を整えて改めて言い直す。
「僕、ピカチュウのライと言います！本部で働きたくて北の森からやって来ました！！」
　それを聞くとエージェントのようなポケモンは「おや、そうだったの」と口に手を当てる。これが本部のポケモンかとライは色々な思いが溢れ出すのを感じた。

「本当は募集が出てる時に来てもらいたかったけど、人手ならぬポケ手はいつも足りてないからね」
「ぼ、募集期間なんてあったんですか……っ！」
初耳だった。そうライが漏らすとエージェントのようなポケモンは仕方ないねとまた笑う。

「本当に短い期間しか募集出してなかったから」
「……え？」
「ちょっと色々あってね、あまり外部から呼ばない方がいいのかもって」
「そうだったんだ……」
「でも僕は人手の足りなさと天秤にかけてみれば、もう少し募集してた方が良かったんじゃないかと思ったりね」
　そしてそのポケモンは笑った。僕で良ければ上に話をしてあげるよ、とライに持ちかけてきてくれたのだ。ライはありがとうございます！と目を光らせる。
「せっかくの志願者だし、北の森からわざわざ来てくれたしね。北はやっぱり寒いんじゃないかい？」
「寒いですけど、今年はそうでもなくて」
「ふうん、暖かったの？」
「いえ、そこまでは……でもいつもは降る雪が今年は全然降ってこなくて」
「雪か……僕生まれてから1度も雪とか見たことないな」
　そんな会話をしながら、ライはエージェントのようなポケモンに誘われるまま長い廊下を進んでいく。「ああ、君はライと言ったね」とそのポケモンがこちらを振り向きそう呟く。