ポケモン本部【あの空の先で】 (ページ16)

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4『大切な誰かの面影で、相手を傷付けるな！』ページ16

──僕は夢の中で、ただ青いあの空を眺めていた。
　あの空がいつ赤黒い切ない色になるのだろうと思いながら。空がそんな色になるわけないのに。でもその時は本当にそうなると思って僕の視界には空が広がってた。まだ青いなあと思いながら。
本当に赤黒になったらきっと不安なはずなのに、僕は不安になるよりずっと冷静にそれを見てて。でも内に燻る何かの衝動の名前を、思いつかないままでいた。

「本当にかっこいいわあ、あのキリキザン……！ね、ユズは誰がタイプなの？」
「えっえっ！わ、わたし……？？」
　そんな年頃の話をしている女の子の声で、ライは目を覚ました。見慣れない天井。見慣れない部屋。記憶をたどる。不穏な程の空の青さは、そうか、あれは夢の話か。
　──ああ。鮮明になってきた。昨日救助隊になって。それから街にでて、あの青いキリキザンをみて。その後街を探し回ったけどゲンガーはやっぱりもういなくて。
　暫くしたらジゼルが迎えに来て「部屋の話してなかったよね？」と言いながら本部の横にあるもうひとつの建物へ案内してくれた。指図め寮というところか。救助隊になれたこと、寮泊まりになること、その他もろもろを手紙にしてマメパト配達員に頼んで北の森まで届けてもらうこととなったのだ。マメパトは決まった時間に本部に来て、愛想の良い笑顔を見せてまた忙しそうに飛び回っていた。

「……青いキリキザン」
　名前を聞いたら、当ててみて。と言ってきた彼。なかなか謎が深いなあなんて思いながらも了解の返事をしたのは自分だったとライは小さな窓から朝日を見た。今日も空は青い。でもそれを見ても、夢の時のような変な感じはなかった。
「最近変わった夢、結構みるなあ……」
　だがここまで変わってなかった気がする。そもそもライはあまり夢の中で景色を見るほうではない。今までの変わった夢というのは、音だ。ずっとノイズが入り交じった、でも辛うじて聞こえる声がずっとしてた。それはたまにはポケモンの話をしてたり、たまには心の話をしてたり……だったとおもう。ここら辺は朧気だ。何せ夢の話であるので。

「えええ！！ゆ、ユズもキリキザンが好きなの？！」
「ちょっとユリちゃん！声が大きいよっ」
　そしてようやく目覚まし代わりとなった女の子の声にライは窓から顔を乗り出した。ライは建物の2階、しかもそこまで背丈のある建物ではないので意外と彼女達が近い。