◆ ページ17
ようやく海が見えるところまで来ると、流れていた人の往来はその顔を変えていた。どちらかと言えば、海賊みたいな人が多くなっている。派手だったり、柄の悪そうな人間が多く見られた。
そのせいか警察がうろうろと街の並びと海の境界をさ迷っていた。……ひとりの子供が「止まれ」を受けて、どこかに連れていかれるのが見えた。
子供ではもう届かない。大人の世界の始まりの場所とでも言うように。
「あら困ったわ……」そう言う彼女に、本当に抜けた先でやって行く根性はあるのかと聞くのは野暮だろうなと彼は返事をしなかった。だが、代わりに──。
「少し街で騒ぎを起こしてくる」
「え？」
「そしたらあいつらもすぐにあそこから居なくなる。ここの警察は暇なんだよ、ああ見えて」
そう言うと、彼は踵を返して街の中へと逆戻りしてこうとした。もう迷いは無かった。騒ぎでもなんでも起こしてやる、ここは、踏み台だ。人生において大きなポイントを占めていたとしても、その全てを踏み台にして、立ち上がる。
そしたら彼女が──手を掴んで止めてきた。「あなたは」と下を向いていた。笑わないのだろうか。
「利用されることが好きな男なのね」
騙されやすいのね、絆されやすいのね。と続けざまに言われて、ちょっと難しい言葉と思いながら「いつ自分のためにしてくれてるって思ったんだ？」と彼の方から笑ってやった。
「違うの？」
「全然違う、思い上がんなよ」
そしたら彼女は少しだけ安心したように、でも「やっぱりマヌケね」と手を離す。この女は子供の容姿の全てを使って色んな人間を利用するし、自分だって間違いなく利用されていたのだが──少しは同情でもしたのだろうか。同情を向けられるのはあまり好きではないのに、彼女の中で何かが変わったと思えば、それもいいなと思った。自分の中の彼女が、この短期間で変化したように。姉の様だと勝手に思ってたこの存在が──。
騒ぎを起こすのは簡単だった。なるべく海の方面に近い店の……たまたまパン屋だったが。そこの店の看板を、派手に蹴り飛ばした。自暴自棄に陥り、たまに暴れるスラムのガキは居ないことはなかっただろうが、ここまで冷静に看板を蹴り飛ばされるとは思ってはいなかったに違いない。蹴り飛ばされた看板は人の波へ飛び込み軽い悲鳴が上がった。
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びぃ(プロフ) - キタザキさん» ありがとうございます……！想いの変化や、口頭でのやり取りなど、どうすれば背伸びをした子供で、なまいきで、でも切なくなるか頭を捻らせた所でもあるので、そう言って頂けて本当に光栄です！応援されるに見合う作品をこれからも書けたらと思います！ (2020年7月20日 0時) (
レス) id: 1463c1385c (このIDを非表示/違反報告)
キタザキ(プロフ) - お気に入り登録と評価させて頂きました。続き楽しみにしてます。更新頑張って下さい！応援してます！！長文失礼しました。 (2020年7月19日 23時) (レス) id: 2f1d24406d (このIDを非表示/違反報告)
キタザキ(プロフ) - はじめまして！素敵な作品ですね！とても読みやすくて情景、感情表現がとても素敵です。一気に読んでしまいました。特に決別の感情表現とお互いに対する想いの変化、口をついて出る会話の駆け引き。丁寧でストーリーに入り込んでしまいます。 (2020年7月19日 23時) (レス) id: 2f1d24406d (このIDを非表示/違反報告)
びぃ(プロフ) - 「 」さん» わー！！「」さんありがとうございます〜！！(；A；)嬉しい……！！！！あれだけ丁寧に説明されたのにも関わらずこの読みにくさで自分で笑ってます(笑)文字書きの道は長い……！ (2020年6月28日 10時) (レス) id: 1463c1385c (このIDを非表示/違反報告)
「 」(プロフ) - 凄い……続きがめちゃくちゃに、気になる・・・。 (2020年6月28日 10時) (レス) id: 57ba460a5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：びぃ | 作成日時：2020年6月28日 4時
