たとえ世界中が敵になっても【VIVANT】

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『乃木さん、私たちに聞かれないように切ったのかな』


接続が切れた画面。確かに先輩は、アリに何か重大なことを打ち明けたはずだ。私たちの知らない、何かを。




黒須「…考えすぎるな」

『うん』



アリのご家族に近づくと、彼らは身を縮めた。当然だ。つい先程まで側近を殺し、彼ら自身も死に追いやるふりをしていたのだから。



『怖い思いをさせてごめんなさい。すぐアリの元へ向かいます。ご家族で逃げてください。詳細はアリに。力になってくれる仲間を用意してありますから。…大丈夫よ、もうすぐお父さんに会えるからね』



子ども二人の頭を撫でると、アリの奥さんが「ありがとうございます」と泣きながら礼をする。


『礼なら我々の先輩に』



家族を殺さないというのも全て、乃木さんの指示だから。



黒須が車を走らせる。広大な土地の途中に、アリと乃木さんが立っているのが見えた。



車の中から、嬉しそうに身を乗り出す子どもたちを見て胸が少し苦しくなる。自分の過去には蓋をしたはずなのに、どうしてこうも思い出してしまうのだろう。




「俺からの礼だ」アリが乃木さんに何かを握らせた。



黒須「何ですかね」

乃木「テントの何かに繋がる番号かもしれない。有効期限は残り五日」

黒須「日本時間で18日、土曜日の朝九時まで。」

『あと120時間、』

乃木「至急司令に報告。本部で調べて貰ってくれ」

『はい』





先輩はサウジに赴き、私たちは日本に帰国した。本部のサイバー担当の解析が難航している以上、何か手を打たなければならない。



「太田の保釈金一億を支払い、彼女に解析を依頼しろ」乃木さんからそう連絡があったのは帰国後、すぐのことだった。



仮家の準備から、最新機器の搬入、ダミー部屋のための家具の搬入。全てを二日で終わらせ、太田の保釈金一億を振り込んだ。無論、組織の金である。




『公安はきっとここに辿り着く。乃木さんを徹底的にマークしてるって。』



公安に潜入する別班の仲間からの報告に目を通す。



黒須「野崎か。今頃太田の釈放も耳に入ってるだろうな」

『そうね。きっとサイバーの彼が、防犯カメラの映像でも見てハシヅメカスタマイズのトラックで全てを勘づいてる。公安が攻めてくるのも時間の問題ね…』

黒須「太田、到着。了解。」


黒須と目を見合わせると、部屋のドアが開いた。




太田「この家も、保釈金も、弁護士の貴方も……もしかして長野専務が？」



太田さんの声が聞こえる。




「私はお答えできません。詳しくは…」その言葉を皮切りに太田さんの前に姿を現した。

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